2026年9月12日、エディオンピースウイング広島で行われた明治安田J1リーグ第7節、サンフレッチェ広島vsセレッソ大阪。
試合は衝撃的なスコアとなった。
サンフレッチェ広島が前半だけで3得点。後半にも攻撃の手を緩めることなく3点を追加し、セレッソ大阪を6-1で撃破した。
中でも圧巻だったのが鮎川峻。2022年以来となるJ1先発のチャンスを得ると、18分、57分、80分にゴールを奪い、自身プロキャリア初となるハットトリックを達成した。鈴木章斗も2得点、中野就斗も1得点を記録し、広島の攻撃陣が爆発した。
一方のC大阪は、両チームが同じ3-4-2-1でスタートした「ミラーゲーム」で広島の強度に対応できず。ボールの失い方、守備への切り替え、デュエル、リスク管理と、多くの局面で後手に回った。
今回は大量7得点が生まれた一戦を、得点経過、スタッツ、全出場選手の独自採点、勝敗を分けたポイントまで徹底分析する。
試合結果
サンフレッチェ広島 6-1 セレッソ大阪
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 大会 | 明治安田J1リーグ 第7節 |
| 開催日 | 2026年9月12日 |
| 会場 | エディオンピースウイング広島 |
| スコア | サンフレッチェ広島 6-1 セレッソ大阪 |
| 前半 | 3-0 |
| 後半 | 3-1 |
| 入場者数 | 27,165人 |
| 天候 | 晴れ |
| 気温 | 28.5℃ |
| 得点 | 鈴木章斗×2、鮎川峻×3、中野就斗/上門知樹 |
広島は前半10分のPKを皮切りにゴールラッシュ。C大阪は終了間際に上門知樹が1点を返したものの、大勢を変えることはできなかった。
試合スタッツ
広島がシュートの「量」と「質」で圧倒
| スタッツ | 広島 | C大阪 |
|---|---|---|
| シュート | 19 | 11 |
| 枠内シュート | 10 | 4 |
| ボール支配率 | 51% | 49% |
| パス成功率 | 77.5% | 76.5% |
| 走行距離 | 116.34km | 112.58km |
| スプリント | 116 | 115 |
| コーナーキック | 9 | 4 |
| ゴール期待値(xG) | 3.60 | 0.55 |
数字で最も象徴的なのが、ボール支配率だ。
51%対49%とボール保持だけを見ればほぼ互角。しかし広島は19本のシュートを放ち、そのうち10本が枠内。ゴール期待値も3.60まで積み上げた。
対するC大阪は11本のシュートを放ったものの枠内は4本、xGは0.55。
「どちらがボールを持ったか」ではなく、「奪ったボールをいかに速く、危険な場所まで運んだか」で巨大な差が生まれた試合だった。
得点までの流れ
10分:鈴木章斗がPKを決めて広島先制
試合序盤から広島が積極的に前へ出る。
C大阪のジャクソン・アーバインのハンドによって広島がPKを獲得すると、キッカーは鈴木章斗。
鈴木がゴール上部へ力強く蹴り込み、広島が先制した。
同じ3-4-2-1同士でスタートした一戦だっただけに、先制点によってC大阪が前へ出なければならなくなったことも、その後の展開に大きな影響を与えた。
18分:鮎川峻がロングカウンターを完結
2点目は、この試合における広島の強さを象徴するゴールだった。
鮎川が自陣から一気にボールを持ち運び、鈴木へパス。
鈴木から左サイドを駆け上がった東俊希へボールが渡ると、東が鋭いグラウンダーのクロスを供給する。
最後はスタート地点からゴール前まで走り続けた鮎川が右足で流し込んだ。
鮎川の推進力、鈴木の判断、東のオーバーラップ。
広島の切り替えの速さが凝縮された一撃だった。
45+3分:鈴木章斗が2点目
前半終了間際、広島が決定的な3点目を奪う。
右サイドで中野就斗と新井直人が連係し、中野が低いクロスをゴール前へ。
C大阪の最終ラインを抜け出した鈴木がダイレクトで合わせ、自身この日2点目。
C大阪としてはハーフタイムまで2点差で耐えたかったところだったが、前半終了直前の失点でゲームプランが大きく崩れた。
55分:中野就斗が自らカウンターを完結
後半からC大阪は3バックから4バックへ変更。
反撃を狙ったが、その時間帯に広島が再びカウンターを発動する。
中野が自陣から左サイドへ大きく展開。鮎川、鈴木へとつながり、最後は最終ラインから猛然と走り込んだ中野へ。
中野が低い弾道のシュートをゴールへ突き刺し、4-0。
DF登録の中野が、自らカウンターの起点となり、そのままフィニッシャーになる。広島の運動量と縦へのスピードが表れた得点だった。
57分:鮎川峻がこの日2点目
4点目からわずか2分。
加藤陸次樹が右サイドからクロスを送り、鮎川がヘディングで合わせる。
一度は中村航輔がボールを処理したように見えたが、VARチェックの結果、ゴールラインを越えていたことが確認されて5-0。
鮎川がこの日2点目を奪った。
80分:鮎川峻がPKでハットトリック
78分、途中出場の松本泰志がディオン・クールズからファウルを受けて広島が再びPKを獲得。
キッカーを務めたのは、すでに2得点を挙げていた鮎川。
GK中村航輔に触られながらもボールはゴールラインを越え、鮎川がプロキャリア初となるハットトリックを完成させた。
90+1分:上門知樹が意地の一撃
最後にC大阪が意地を見せる。
香川真司からボールを受けた上門知樹がペナルティーエリア手前から右足を振り抜く。
シュートはゴール左上へ突き刺さり、C大阪が1点を返した。
試合結果を左右する得点ではなかったものの、次戦へ向けて少なくとも無得点で終わらなかったことは一つの材料となる。
サンフレッチェ広島 スタメン・選手採点
WSP独自採点
| 選手 | 採点 | 寸評 |
|---|---|---|
| GK 大迫敬介 | 7.0 | 今季リーグ戦初先発。終盤まで安定したセービングを披露 |
| DF 荒木隼人 | 7.0 | 中央で安定。櫻川との競り合いでも優位に立った |
| DF 中野就斗 | 8.5 | 圧巻の上下動。1得点に加え右サイドから何度も攻撃を加速 |
| DF 佐々木翔 | 6.5 | 前半を無失点でまとめ、後半開始時に交代 |
| MF 新井直人 | 7.5 | 中野とのコンビで右サイドを攻略。攻撃の幅を作った |
| MF 川辺駿 | 7.0 | 中盤でボールを回収し、広島の攻守のテンポを支配 |
| MF 東俊希 | 8.0 | 鮎川の1点目をアシスト。左サイドで大きな違いを生んだ |
| MF 加藤陸次樹 | 7.5 | 前線と中盤をつなぎ、鮎川の2点目につながるクロスも供給 |
| MF 鮎川峻 | 9.5 | 文句なしのMOM。プロ初ハットトリックに加え、カウンターでも圧倒的存在感 |
| MF 中島洋太朗 | 7.0 | ライン間でボールを受け、攻撃のリズムを作った |
| FW 鈴木章斗 | 9.0 | 2得点に加えて鮎川のゴールにも関与。攻撃の基準点として圧巻 |
広島は前節から先発2人を変更し、大迫敬介が今季リーグ初先発。鮎川は2022年以来となるJ1先発だった。
サンフレッチェ広島 途中出場選手・採点
大量リードでも強度を落とさなかった
| 選手 | 投入 | 採点 | 寸評 |
|---|---|---|---|
| キム・ジュソン | 46分 | 6.5 | 後半から3バックに入り安定した対応 |
| 松本泰志 | 62分 | 7.0 | PKを獲得するなど途中出場から積極的に攻撃へ参加 |
| 川村拓夢 | 62分 | 6.5 | 中盤でボールを動かし、決定機にも顔を出した |
| 越道草太 | 68分 | 6.5 | 右サイドで運動量を発揮 |
| 野口蓮斗 | 81分 | 6.0 | 18歳でプロデビュー。枠内シュートも記録 |
特に注目したいのは野口蓮斗。6-0となった直後に鮎川との交代でピッチへ入り、プロデビューを果たした。
セレッソ大阪 スタメン・選手採点
WSP独自採点
| 選手 | 採点 | 寸評 |
|---|---|---|
| GK 中村航輔 | 5.0 | 6失点。ただし複数のシュートを防いでおり、GKだけを責められる内容ではない |
| DF 井上黎生人 | 4.5 | 広島の高速攻撃への対応に苦戦。最終ラインが何度もさらされた |
| DF ディオン・クールズ | 4.5 | 後半にPKを献上。広島の前線を捕まえ切れず |
| DF 畠中槙之輔 | 4.5 | 3バック中央で守備を統率できず。後半途中で交代 |
| MF 田中駿汰 | 5.0 | 中盤で奮闘したが、広島の切り替えについていけない場面が多かった |
| MF チアゴ・アンドラーデ | 5.0 | 持ち味の突破力を出す前に守備へ追われる展開 |
| MF ハビ・エルナンデス | 5.0 | Jリーグデビュー戦。技術は見せたが、試合展開が厳し過ぎた |
| MF 奥田勇斗 | 4.5 | 広島のサイド攻撃に押し込まれ、攻撃参加を増やせず |
| MF ジャクソン・アーバイン | 4.5 | 序盤にPKにつながるハンド。中盤でもセカンドボール争いで苦戦 |
| MF ルーカス・フェルナンデス | 5.0 | 広島CBとWBの間を狙ったものの、狙い通りにボールを受けられず |
| FW 櫻川ソロモン | 5.0 | 前線で孤立。十分なサポートを受けられなかった |
C大阪は前節から4人を変更。両チームとも3-4-2-1でスタートしたが、同じ配置だからこそ個々のデュエルと切り替えの差がより明確に表れた。
セレッソ大阪 途中出場選手・採点
4人同時投入でも流れは変わらず
| 選手 | 投入 | 採点 | 寸評 |
|---|---|---|---|
| 香川真司 | 63分 | 6.0 | 終盤に上門のゴールをアシスト。ボールを落ち着かせた |
| 横山夢樹 | 63分 | 6.0 | 左サイドから積極的に仕掛け、終盤には枠内シュート |
| 大畑歩夢 | 63分 | 5.5 | 攻撃参加を増やしたが試合を変えるには至らず |
| パブロ・サバック | 65分 | 5.0 | 前線に入ったが決定機は作れず |
| 上門知樹 | 75分 | 6.5 | 終了間際に豪快なミドルを決め、一矢報いた |
0-5となった後、C大阪は香川、横山、大畑、サバックを相次いで投入。
試合そのものをひっくり返すことはできなかったが、香川から上門へつないだ90+1分の得点は、交代組が最後までプレーを止めなかった結果だった。
MOM
鮎川峻【9.5】
この試合のMOMに迷いはない。
鮎川峻だ。
J1での先発は2022年シーズン以来。それでも長いブランクを感じさせるどころか、3得点を記録してプロキャリア初のハットトリックを達成した。
特に評価したいのが18分のゴール。
自陣からボールを運び始め、その後にパスを出してプレーを終えるのではなく、東俊希のクロスに合わせるためゴール前まで走り切った。
57分はストライカーらしくゴール前へ入り、80分にはPKでハットトリックを完成。
「運ぶ」「走る」「合わせる」「決める」。
FWとして求められる仕事をほぼすべて表現した90分だった。
サンフレッチェ広島はなぜ勝てたのか?
勝因① ミラーゲームの1対1で圧倒した
両チームは3-4-2-1でスタートした。
つまり多くの局面で、ポジションごとの「1対1」が発生する。
この状況で広島は球際、セカンドボール、スプリント、背後へのランニングで優位に立った。
C大阪のパブロ・マチン監督も試合後、真っ向勝負を選択した中で、広島に主導権を握られ「力の差を見せられた」と振り返っている。
勝因② 「奪った後」のスピードが別次元
広島の2点目と4点目が象徴的だった。
ボールを奪った瞬間、選手が一斉に前を向く。
鮎川、鈴木、東、中野と複数の選手が同時に走るため、C大阪は「ボール保持者を止めるのか」「走っている選手についていくのか」の判断を迫られ続けた。
横パスで相手が戻る時間を与えるのではなく、まずゴールへ向かう。
この縦への意識が6得点につながった。
勝因③ 鈴木章斗と鮎川峻の相互作用
鈴木が自分で2点を取ったことも大きいが、それ以上に鮎川との関係性が良かった。
鮎川が運べば鈴木が受ける。
鈴木がボールを受ければ、鮎川がその先へ走る。
どちらか一人を封じても、もう一人が空いたスペースを利用する構造になっていた。
2人合わせて5得点という数字以上に、C大阪の最終ラインにとって非常に捕まえにくいコンビだった。
勝因④ サイドが「人数」ではなく「スピード」で上回った
東俊希と中野就斗の両サイドも決定的だった。
東は鮎川の1点目をアシスト。
中野は右サイドから鈴木の2点目につながるクロスを入れ、さらに自ら4点目を記録した。
ウイングバックが高い位置へ出るだけではなく、後方から勢いを持って飛び出すことでC大阪の守備陣が対応し切れなくなった。
セレッソ大阪はなぜ6失点したのか?
課題① ボールの失い方が悪過ぎた
最も大きな問題はここだろう。
C大阪は攻撃を組み立てようとしたが、中盤や自陣で失った瞬間、守備の準備ができていないケースが多かった。
マチン監督も試合後、「攻めながらの守備」ができなかったこととリスク管理を敗因として挙げている。
ジャクソン・アーバインも、失ってはいけないエリアでのミスによって広島のカウンターを受けたことを大量失点の主要因として認めている。
課題② 前からの守備を外された後の対応
前線が広島へプレスを掛けても、そこを一度突破されると最終ラインまで一気にボールを運ばれた。
つまり一列目のプレスと最終ラインの間に、相手の前進を止める「二つ目の壁」がなかった。
前から奪えなかった時に撤退するのか。
中盤がファウルも含めて止めるのか。
誰がボール保持者へ出て、誰がランナーについていくのか。
ここを再整理する必要がある。
課題③ 3バックから4バックへの変更後も改善できなかった
C大阪は0-3で折り返すと、後半から4バックへ変更した。
立ち上がりには多少押し込む時間も作ったが、55分に4点目を許す。
その2分後には5点目。
マチン監督も、4点目を奪われたことで後半に狙っていたプランが機能しなくなり、チームの勢いも失われたと説明している。
サンフレッチェ広島が次戦までに改善したいポイント
終盤の失点はゼロにしたかった
6-0という大差がついた試合とはいえ、90+1分の失点は改善材料だ。
大量リードによって多少守備の集中が落ちるのは理解できるが、優勝争いを考えれば完封できる試合を最後までゼロで終わらせたい。
特に香川真司が入ってからは、C大阪がライン間でボールを持つ回数が増えた。
勝敗が決した後でも守備強度を維持できれば、広島はさらに隙のないチームになる。
セレッソ大阪が次戦までに改善したいポイント
「攻めながら守る」配置を再構築したい
6失点したからといって、最終ラインだけを変更すれば解決するわけではない。
重要なのは攻撃時の配置だ。
サイドバックや中盤が前へ出る際、ボールを失った時にカウンターを止める選手をどこへ配置するか。
広島戦では、このリスク管理が機能しなかった。
また、相手と同じシステムになった場合に、1対1だけで解決しようとせず、数的優位をどう作るのかも再確認したい。
今後の展望
広島:勝点14へ。上位争いへ大きな6得点
広島は第6節終了時点で3勝2分1敗、勝点11だった。
この勝利によって4勝2分1敗、勝点14へ。
さらに得失点差の面でも「6-1」という結果は非常に大きい。
長いリーグ戦では勝点が並んだ際に得失点差が重要になるだけに、一試合でプラス5を積み上げた価値は高い。
次節は9月19日、アウェイでアビスパ福岡と対戦する。
C大阪:大敗を「一試合」で終わらせられるか
C大阪は勝点10のまま。
問題は6失点そのものより、この敗戦を次戦へ引きずることだ。
マチン監督、アーバイン、井上黎生人、上門知樹らの試合後コメントからも、この敗戦を非常に重く受け止めていることが分かる。
次節は9月19日、アウェイでV・ファーレン長崎戦。
ここで守備の整理とメンタル面の立て直しを見せられるかが重要になる。
まとめ
鮎川峻だけではない。「広島らしさ」が凝縮された6-1
最終スコアは、
サンフレッチェ広島 6-1 セレッソ大阪。
鮎川峻のハットトリックが最大のトピックになったことは間違いない。
しかし、広島の勝利を鮎川一人の活躍だけで説明することはできない。
鈴木章斗が2得点。
中野就斗が1得点。
東俊希が左からチャンスを作り、新井直人が右サイドを支え、川辺駿が中盤を締める。
そしてボールを奪った瞬間には、複数の選手が同時にゴールへ走る。
「前へ出る」「奪う」「走る」「仕留める」。
広島が得意とするサッカーが、非常に高いレベルでかみ合った一戦だった。
対するC大阪にとっては、今季最も厳しい90分の一つになった。
ただしリーグはまだ第7節。
6-1も一敗であることに変わりはない。
この大敗から何を修正し、次戦でどのようなリアクションを見せるのか。
広島にとっては勢いを本物にできるのか、C大阪にとっては立て直す力を示せるのか。
両チームの第8節は、それぞれ違う意味で重要な一戦となる。
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本記事について
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