2026年8月26日、町田GIONスタジアムで行われた天皇杯 JFA 第106回全日本サッカー選手権大会2回戦「FC町田ゼルビアvsいわてグルージャ盛岡」。
前回大会王者の町田が、JFLに所属する岩手を3-0で退け、天皇杯連覇へ向けて順調なスタートを切りました。前半37分に松尾佑介が均衡を破ると、後半には途中出場のテテ・イェンギと中村帆高が追加点。スコアだけを見れば町田の快勝ですが、岩手にも後半立ち上がりに流れを引き寄せかけた時間があり、単純な「カテゴリー差だけで決まった試合」ではありませんでした。
なぜ町田は主力を一部入れ替えながらも3得点を奪えたのか。岩手はどこまで前回王者を苦しめられたのか。
本記事では、2026年8月27日現在の最新情報をもとに、両チームのスターティングメンバー、得点シーン、試合の流れ、そして3-0という結果になった理由を詳しく振り返ります。
1. はじめに:前回王者・町田の天皇杯初戦
町田にとって、この試合は「勝って当然」と見られやすい難しい一戦でした。
2025年の天皇杯を制したディフェンディングチャンピオンであり、2026/27シーズンのJ1でも開幕からFC東京に5-1、ジェフユナイテッド千葉に4-0、浦和レッズに3-1と3連勝。対する岩手はJFLを戦うチームです。
しかし、天皇杯ではカテゴリー差がそのまま結果に反映されないのが怖さでもあります。同日の2回戦でもJ1名古屋グランパスがJ3ガイナーレ鳥取に1-3で敗れ、J1水戸ホーリーホックも京都産業大学に0-2で敗退しました。町田にも決して油断できる状況ではありませんでした。
黒田剛監督はリーグ戦のメンバーから入れ替えを行いました。それでも試合の強度を大きく落とさず、最後は3-0。ここに現在の町田の「チーム全体としての強さ」が表れています。
試合は8月26日18時30分キックオフ。観客数は2,515人。29.3度、湿度79%という厳しいコンディションの中で行われました。
| 項目 | FC町田ゼルビア | いわてグルージャ盛岡 |
|---|---|---|
| 最終スコア | 3 | 0 |
| 前半 | 1 | 0 |
| 後半 | 2 | 0 |
| シュート | 13 | 7 |
| CK | 7 | 1 |
| 得点 | 松尾佑介、テテ・イェンギ、中村帆高 | ― |
| 退場 | ― | 柳世根 |
2. FC町田ゼルビアvsいわてグルージャ盛岡のスタメン
FC町田ゼルビア
町田の先発は、GK守田達弥。最終ラインにドレシェヴィッチ、菊池ダビド流帆、キム・ミンテが入り、望月ヘンリー海輝、白崎凌兵、下田北斗、増山朝陽が中盤を形成。前線には西村拓真、仙頭啓矢、松尾佑介が並びました。
町田スタメン:
GK 守田達弥
DF ドレシェヴィッチ、菊池ダビド流帆、キム・ミンテ
MF 望月ヘンリー海輝、白崎凌兵、下田北斗、増山朝陽
FW 西村拓真、仙頭啓矢、松尾佑介
谷晃生、昌子源、前寛之、ネタ・ラヴィ、相馬勇紀らがベンチスタートとなっており、リーグ戦を見ているファンなら「かなり入れ替えた」と感じたはずです。それでもドレシェヴィッチ、キム・ミンテ、下田、白崎、西村など経験豊富な選手が並び、天皇杯でも強度を維持できる布陣となりました。
いわてグルージャ盛岡
岩手はGK植田峻佑。DF石田崚真、弓削翼、柳世根、斉藤拓、中盤に大亀海世、大橋尚志、新玉瑛琉、西口黎央、前線に濱田竜輝と森夲空斗という11人でスタートしました。
岩手スタメン:
GK 植田峻佑
DF 石田崚真、弓削翼、柳世根、斉藤拓
MF 大亀海世、大橋尚志、新玉瑛琉、西口黎央
FW 濱田竜輝、森夲空斗
岩手は1回戦で札幌大学を1-0で破って2回戦へ進出。ただし、この町田戦では先発メンバーを一部変更しており、菊池利三監督も試合後、「これまでスタートから起用できなかった選手たち」に期待して送り出したことを明かしています。
3. 【試合分析】前半37分、松尾佑介の一撃が均衡を破る
試合序盤から町田は、カテゴリーが下の相手だからといって無理に前へ人数をかけるのではなく、自分たちの強みである強度と前への推進力を保ちながら試合を進めました。
一方の岩手も、ただ自陣に引きこもったわけではありません。町田の圧力を受けながらも守備ブロックを維持し、ボールを奪った後には前線へ出ていこうとする姿勢を見せます。
それでも時間が進むにつれ、町田がセカンドボールを拾い直して攻撃を継続する場面が増えていきました。
そして迎えた37分。
ドレシェヴィッチが右の低い位置から逆サイドへボールを送り、左サイドの増山朝陽へ。増山が中央へ送ったボールに松尾佑介が合わせ、ワンタッチの右足シュートで先制点を奪います。
このゴールで大きかったのは、フィニッシュした松尾だけではありません。
町田はピッチを横断するボールで岩手の守備を動かし、その直後に逆サイドからゴール前へ入り直しました。守備陣が横方向へ揺さぶられたところで、松尾が中央の決定的なエリアへ顔を出しています。
前半のシュート数は町田5本、岩手2本。大量の決定機を作ったわけではないものの、町田が必要なタイミングで仕留め、1-0でハーフタイムを迎えました。
4. 【後半の攻防】岩手の反撃と町田の選手層
興味深かったのは後半開始直後です。
岩手はハーフタイムに新玉瑛琉から小松寛太、西口黎央から宮原輝へ2枚替え。菊池監督によると、前半は町田のプレッシングを受け、中盤でボールを持ち運ぶ場面をほとんど作れなかったため、小松らを投入することで前進できる時間を作ろうとしました。
この修正は一定の効果を見せます。
岩手は後半立ち上がりに前半よりもボールを運べるようになり、町田陣内でフィニッシュへ持ち込む場面を作りました。菊池監督自身も試合後、「後半にチャンスを構築できた」点を成果として挙げています。
もしこの時間帯に1-1にできていれば、試合は一気に分からなくなっていたでしょう。
ところが、その流れを断ち切ったのが町田の選手交代でした。
町田は61分、菊池ダビド流帆に代えて岡村大八、増山朝陽に代えて中村帆高、先制点を決めた松尾に代えてテテ・イェンギを投入します。
そして69分、そのテテ・イェンギが結果を出しました。
左CKを下田北斗がゴール前へ送り、テテ・イェンギが中央でヘディング。これが決まり、町田が2-0とします。
岩手からすれば、後半開始から少しずつ流れを引き寄せていただけに痛すぎる失点でした。
さらに80分、岩手DF柳世根が「決定的な得点機会の阻止」により退場。JFA公式記録では80分、岩手公式では81分と表記されていますが、いずれにしても残り時間を10人で戦わなければならなくなりました。
そして84分、町田が試合を決定づけます。
再び下田の左CK。岩手GKがクリアしたボールを中村帆高が回収し、右足でシュート。途中出場の中村が3点目を奪い、スコアは3-0となりました。
テテ・イェンギと中村帆高。61分に投入された2人がそろって得点したことは、この試合を象徴するポイントでした。
5. 町田が3-0で勝利できた3つの理由
理由①「セットプレー」という確実な武器
最も分かりやすかった差はセットプレーです。
町田はCKを7本獲得したのに対し、岩手はわずか1本。そして町田の2点目は下田のCKからテテ・イェンギ、3点目も下田のCKを起点に中村が決めています。
流れの中で完全に崩せない時間があっても、セットプレーから得点できる。
一発勝負の天皇杯において、これは極めて大きな武器です。
理由② 選手を入れ替えても強度が落ちなかった
町田は谷晃生、昌子源、前寛之、ネタ・ラヴィ、相馬勇紀らを先発から外しました。
普通ならメンバーを大幅に入れ替えれば、攻守の連係が落ちてもおかしくありません。
しかし実際には、先発した松尾が1得点。さらに途中出場したテテ・イェンギと中村も得点しています。
「主力を温存したから戦力が落ちる」のではなく、別の選手が出ても試合を仕留められる。天皇杯連覇を狙う町田にとって、この選手層は大きなアドバンテージです。
理由③ 岩手が流れをつかみかけた時間に仕留めた
スコアだけなら3-0ですが、岩手にもチャンスはありました。
公式記録上、岩手は90分でシュート7本。そのうち後半だけで5本を放っています。前半2本から数字を伸ばしたことからも、ハーフタイムの修正が機能したことが分かります。
菊池監督も、小松らを入れて中盤からボールを運べるようになったことでチャンスにつながったと振り返っています。
ただ、その時間帯を岩手が得点につなげる前に町田が2点目を奪いました。
サッカーでは「流れが良い」だけでは勝てません。
良い時間帯に決め切れるか。相手に流れが傾いた時間を失点せず耐えられるか。
この部分にJ1トップクラスを戦う町田と、JFLを戦う岩手の現在地の差が最もはっきり表れたように感じます。
6. まとめ:王者町田の強さと岩手が持ち帰った収穫
最終結果はFC町田ゼルビア 3-0 いわてグルージャ盛岡。
町田が前回王者らしく危なげなく3回戦へ駒を進めました。37分に松尾佑介が先制し、後半はテテ・イェンギと中村帆高という途中出場組が追加点。シュート13対7、CK7対1という数字にも、90分を通した町田の優位性が表れています。
ただし、岩手にとって「何もできなかった0-3」ではありませんでした。
後半開始から選手交代によって中盤でボールを運べるようになり、実際に後半だけで5本のシュートを記録しました。菊池監督も試合後、交代選手がチームにエネルギーを与えたことや、J1トップクラスを相手にすることで「日常の基準」の差を知ることができた点を収穫として挙げています。
一方で町田にとっては、リーグ戦の主力を休ませながら勝利し、途中出場選手まで結果を残せたことが非常に大きいでしょう。
天皇杯の一発勝負では、毎試合ベストメンバーを固定して戦い続けることはできません。
誰が出ても強度を維持できること。
セットプレーで試合を動かせること。
相手に流れが傾いた時間を耐え、次の一撃を決められること。
この3つを町田は初戦から示しました。
3-0という数字以上に、「前回王者が今年も簡単には崩れそうにない」と感じさせる90分だったと言えるでしょう。
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