37歳。
ストライカーとしては、「全盛期を過ぎたベテラン」と見られても不思議ではない年齢です。
しかし、ピエール=エメリク・オーバメヤンには、そんな常識がどうやら当てはまりません。
2026年夏、オリンピック・マルセイユからデポルティーボ・ラ・コルーニャへ加入したガボン代表FWは、ラ・リーガ開幕から4試合連続ゴール。4試合で4得点2アシストという驚異的なスタートを切っています。37歳になった今も、ゴール前でのスピード、抜け出し、そしてフィニッシュの鋭さは健在です。
しかも今季のデポルティーボは、実に8シーズンぶりのスペイン1部復帰。
かつてベベット、マウロ・シウバ、ジャウミーニャ、バレロン、マカーイらを擁し、スペインの強豪たちを脅かした「スーパー・デポル」。
その名門復活の物語の中心にいるのが、まさか37歳のオーバメヤンなのです。
今回は、衰えを知らないオーバメヤンの4試合連続ゴールと、デポルティーボで起きている“スーパー・デポル再生”について掘り下げます。
1. 37歳オーバメヤン、デポル加入から4試合連続ゴール
ラ・リーガ復帰初戦からいきなり結果
デポルティーボがオーバメヤンの獲得を発表したのは2026年7月16日。
契約は2028年6月までの2年間。前年はマルセイユでリーグ戦30試合10得点6アシストを記録しており、決して「名前だけのベテラン」ではありませんでした。
とはいえ37歳。
8年ぶりに1部へ戻ってきた昇格クラブが、チームの得点源をベテランFWに託すことに不安を感じた人もいたでしょう。
ところがシーズンが始まると、その心配はあっという間に消えます。
オーバメヤンは開幕から、
第1節 エルチェ戦:1得点
第2節 マラガ戦:1得点
第3節 バレンシア戦:1得点
第4節 ビジャレアル戦:1得点
と、出場したリーグ戦すべてで得点。
4試合4ゴールとなりました。
さらに第4節のビジャレアル戦ではゴールだけでなく2アシストまで記録しています。
「点を取るだけのストライカー」ではなく、デポルの攻撃そのものを動かす存在になっているのです。
2. ビジャレアル戦で圧巻の1ゴール2アシスト
チャンピオンズリーグ出場クラブを敵地で撃破
オーバメヤンの現在地を象徴したのが、9月5日に行われたビジャレアル戦でした。
相手は欧州カップ戦を争う力を持つ強豪。
しかもアウェーのラ・セラミカです。
昇格したばかりのデポルにとって、その実力が本物なのかを試される一戦でした。
そこでオーバメヤンがやってのけたのが、1ゴール2アシスト。
ルイスミ・クルスの同点ゴールを演出すると、さらにエッダフチリの得点もアシスト。そして2-2で迎えた88分、自ら決勝ゴールを奪いました。
デポルティーボは3-2で勝利。
オーバメヤンはチームの全3得点に直接関与したことになります。
37歳の選手が試合終盤に決勝点。
しかも、それまでに2点をお膳立てしている。
「経験豊富なベテランが若手を支えている」という表現では、もはや足りません。
完全にエースです。
3. ベベット超え?加入直後から歴史的ペース
デビューから4戦連発という異次元スタート
さらに驚くべきは、この4試合連続ゴールがクラブ史でも特別な記録になっていることです。
海外メディアでは、デポル加入後最初のリーグ4試合すべてで得点したことで、名手ベベットが持っていた加入直後の連続得点記録を更新したと報じられています。
一方、地元メディア「Riazor.org」は、シーズン開幕から4節連続でゴールを記録したデポルの選手として、パイーニョやワルテル・パンディアーニの名前も挙げています。つまり記録の定義によって比較対象は異なるものの、オーバメヤンのスタートがクラブ史でも極めて珍しいレベルであることは間違いありません。
そして何より象徴的なのが「ベベット」という名前でしょう。
4. “スーパー・デポル”を知る人には特別な「ベベット超え」
かつてレアル、バルサを脅かした地方クラブ
現在の若いサッカーファンにとって、デポルティーボは長く2部や3部で戦っていたクラブというイメージが強いかもしれません。
しかし1990年代から2000年代前半を知る人にとって、デポルはまったく違う存在でした。
愛称は、
「スーパー・デポル」
1990年代にはベベット、マウロ・シウバ、ドナトらを擁してスペインの強豪と互角に戦い、1999-2000シーズンにはクラブ史上初となるラ・リーガ優勝を達成しました。ラ・リーガ自身も当時のチームを「Super-Depor」と呼んでいます。
その勢いは欧州でも続きます。
2000-01、2001-02シーズンにはチャンピオンズリーグ準々決勝、そして2003-04シーズンにはベスト4まで進出。
ポルトに敗れて決勝進出こそ逃しましたが、当時のデポルティーボは紛れもなく欧州のトップクラブの一つでした。
レアル・マドリードやバルセロナのような巨大クラブとは資金力で大きな差がある。
それでも選手発掘と組織力で強豪を倒す。
それこそが「スーパー・デポル」の魅力でした。
5. しかし名門は長い低迷期へ
1部どころか3部まで降格
栄光は永遠には続きませんでした。
黄金時代を終えたデポルは徐々に低迷。
2017-18シーズンを最後にラ・リーガから降格すると、その後は2部だけでなくスペイン3部まで落ちる厳しい時期を経験します。
かつてチャンピオンズリーグ準決勝まで戦ったクラブが、欧州どころか1部の舞台から姿を消しました。
そこから再建を進め、2026年5月についに1部昇格。
クラブ公式も、最後の降格から8シーズンぶりのプリメーラ復帰だったと記しています。
だからこそ、今回のラ・リーガ復帰は単なる昇格ではありません。
デポルにとっては、
「失われた時代を取り戻すための第一歩」
なのです。
6. なぜ37歳でもオーバメヤンは点を取れるのか?
全盛期の「速さ」だけに頼らなくなった
ドルトムント時代のオーバメヤンと言えば、とにかく速い。
最終ラインの裏へ飛び出し、DFを置き去りにしてゴールを決める。
そんなイメージが強いでしょう。
もちろん37歳となった現在、20代とまったく同じスプリント力を維持しているわけではありません。
しかし、いまのオーバメヤンにはキャリアで培った別の武器があります。
「いつ走るか」がうまい
重要なのは走る速さだけではありません。
どのタイミングで走るか。
相手CBが一瞬ボールを見る。
サイドバックが少し高い位置を取る。
パスの出し手が前を向く。
その瞬間にスタートする。
全盛期には純粋なスピードで相手を破壊していたストライカーが、現在は経験と予測で相手より先に動いています。
そのため37歳になっても、ゴール前では依然として危険なのです。
7. 4試合4得点だけではない「2アシスト」の価値
若手と共存できるベテランへ
さらに今のオーバメヤンを面白くしているのが、得点だけではないことです。
4試合で2アシスト。
ビジャレアル戦では、自分でシュートへ持ち込める場面でも味方を使いました。
かつてのオーバメヤンは、最終ラインとの駆け引きからフィニッシュする“ゴールゲッター”という印象が強い選手でした。
しかしデポルでは、周囲を生かしながら自分もゴール前へ入る。
チームには若いアタッカーも多く、ベテランの経験が攻撃陣全体へ還元されています。
クラブが彼を獲得した理由も、単純な得点力だけではなく、経験・リーダーシップ・勝者としての基準をチームにもたらすことにあったのでしょう。クラブ公式も加入発表時に、その経験と得点力、リーダーシップを補強ポイントとして挙げています。
8. 「スーパー・デポル復活」はまだ早い。それでも夢を見たくなる
8年ぶりの1部で無敗スタート
もちろんシーズンはまだ4試合。
この時点で、
「スーパー・デポルが完全復活した」
と結論づけるのは早すぎます。
長いシーズンでは必ず不調も来ます。
昇格組にとって最優先の目標は、まずラ・リーガに定着することです。
それでも、8年間待ち続けたサポーターが夢を見たくなるのも無理はありません。
1部へ帰ってきた。
開幕から簡単には負けない。
そして37歳の世界的ストライカーが4試合連続でゴールを決めている。
かつてベベットやマカーイ、パンディアーニら世界的ストライカーがゴールを量産したクラブに、再び強烈な得点源が現れました。
それだけでも、リアソールに昔の空気を感じるには十分でしょう。
9. オーバメヤン自身にとっても“復活”ではなく新たな証明
ドルトムント、アーセナル、バルセロナ…そしてデポル
オーバメヤンのキャリアはすでに十分すぎるほど華やかです。
ドルトムントでは213試合141得点。
アーセナルでは163試合92得点。
バルセロナでも2021-22シーズンに24試合13得点を記録しました。
さらにフランス、ドイツ、イングランド、スペイン、サウジアラビアとさまざまな国でゴールを積み重ねてきました。
それでも37歳になって再びラ・リーガへ。
しかも、優勝争いをする巨大クラブではなく、8年ぶりに戻ってきたデポルティーボを選んだ。
そして4試合4ゴール。
これは「昔すごかった選手の余生」と呼ぶには、あまりにも刺激的です。
むしろ、
オーバメヤンというストライカーのキャリアに、新しい章が始まった。
そう表現した方がしっくりきます。
10. まとめ:37歳のエースが“スーパー・デポル”の夢をもう一度見せる
8シーズンぶりにラ・リーガへ帰ってきたデポルティーボ。
その復活シーズンで誰よりも目立っているのが、37歳のピエール=エメリク・オーバメヤンです。
加入後リーグ4試合。
4試合連続ゴール。
4得点。
2アシスト。
そして第4節ビジャレアル戦では、2アシストを記録したうえで88分に決勝点。
衰えを心配されるはずの年齢で、チームの中心として試合を決めています。
もちろん、まだシーズンは始まったばかり。
現在のデポルを、リーグ王者となった1999-2000シーズンや、チャンピオンズリーグ4強へ進出した時代と並べるのは早いでしょう。
それでも、
「デポルがまた何かやるかもしれない」
そう思わせる空気が戻ってきました。
そして、その先頭を走っているのが37歳のストライカーです。
20代の頃は、その圧倒的なスピードでDFを置き去りにしてきたオーバメヤン。
いま彼が追いかけているのは、相手DFだけではありません。
長い低迷を乗り越えて帰ってきたデポルティーボとともに、“スーパー・デポル”と呼ばれた時代の背中を追いかけているのかもしれません。
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