2026年W杯に向けて、国際サッカー連盟(FIFA)は全6大陸から170名の審判団(主審52名、副審88名、VAR担当30名)を選出しました。南米サッカー連盟(CONMEBOL)からは、ファクンド・テージョ主審やダリオ・エレーラ主審らと共に、エルナン・マストランへロ氏がVAR専任担当として選出されました。
アルゼンチンの国内リーグは、熱狂的なサポーターと激しい球際での攻防が特徴であり、審判に対するプレッシャーが世界で最も厳しい環境の一つとして知られています。マストランへロ氏は、そうした過酷な環境で主審として経験を積み、近年は映像判定のスペシャリストとしての才能を開花させました。FIFAからVAR担当として2026年W杯の切符を託されたことは、極限の重圧の中でも正確なジャッジを下すことができる彼に対する高い評価と信頼の証です。
目次
- エルナン・マストランへロのプロフィールと主な経歴
- これまでの主な実績と担当したビッグマッチ
- レフェリングの特徴と傾向
- まとめ
- 免責事項
エルナン・マストランへロのプロフィールと主な経歴
マストランへロ氏は、審判一家というサッカーに深く根差したバックグラウンドを持つ人物です。
- 氏名:エルナン・カルロス・マストランへロ(Hernán Carlos Mastrángelo)
- 生年月日:1981年4月4日(2026年W杯開催時:45歳)
- 国籍:アルゼンチン(ブエノスアイレス出身)
- プロデビュー:2015年(アルゼンチン・プリメーラ・ディビシオンでの主審デビューは2017年)
- 国際審判員(FIFA)登録:2023年(ビデオ・アシスタント・レフェリーとして登録)
彼の父親であるカルロス・アルベルト・マストランへロ氏も、1980年代から90年代にかけて活躍したアルゼンチンの歴史的な名審判です。父の背中を追って審判の道を志した彼は、2015年にプロのレフェリーとなり、2017年には30代半ばでアルゼンチンのトップカテゴリーであるプリメーラ・ディビシオン(1部リーグ)でデビューを果たしました。デビュー戦はベレス・サルスフィエルド対ウラカンの一戦で、1-1の引き分けという結果でした。
国内トップリーグで着実に実績を重ねた彼は、テクノロジーの導入とともにVARとしての適性を見出され、2023年にFIFAから国際ビデオ・アシスタント・レフェリーとして正式にリストアップされました。
これまでの主な実績と担当したビッグマッチ
マストランへロ氏は、南米や世界の国際舞台において、映像判定の要として数々のビッグマッチを担当しています。
- FIFA ワールドカップ 2026のVAR選出: 北中米W杯において、CONMEBOLを代表するVAR担当の1人として選出され、世界最大のスポーツイベントの審判団に名を連ねています。
- コパ・リベルタドーレス決勝でのVAR担当: 南米のクラブ王者を決める最高峰の大会「コパ・リベルタドーレス」において、2024年の決勝戦というプレッシャーの大きい舞台でVARを任され、的確な映像サポートを行いました。
- FIFA クラブワールドカップ 2025での活躍: アメリカで開催された32チーム参加の拡大版クラブワールドカップにおいてもVAR担当として招集され、世界各大陸のチャンピオン同士の試合をモニター越しにコントロールしました。
- 南米予選および国内での大一番: 2026年W杯南米予選の「チリ代表対ベネズエラ代表」といった重要な国際試合でAVAR(アシスタントVAR)を務めたほか、アルゼンチン国内のコパ・アルヘンティーナやリーガ・プロフェシオナルでも数多くの試合を担当しています。
レフェリングの特徴と傾向
サッカーをより深く楽しむためには、審判の「判定の傾向」を把握することが重要です。主審およびVARとしてのマストランへロ氏の特徴を分析します。
1. バランスを重んじるゲームコントロールとカード傾向
現場の主審としてのマストランへロ氏は、「必要な時には毅然と対応する」バランス型のレフェリーとして知られています。通算173試合のデータを見ると、1試合あたりの平均イエローカード提示数は約4.96枚、レッドカード提示数は約0.14枚となっています。南米の激しいプレースタイルを考慮すると、カードを極端に乱発するわけではなく、試合のコントロールと規律の維持を両立させようとする傾向が見られます。
2. 審判一家ゆえの重圧と物議を醸した判定
熱狂的なアルゼンチンサッカー界において、彼のバックグラウンドや判定が激しい論争の的になることもありました。
彼の父親であるカルロス氏は、現役引退後に自身が「熱狂的なリーベル・プレートのファンである」と公言していました。このため、コパ・アルヘンティーナの「リーベル・プレート対ラシン・クラブ」などの試合にエルナン氏が割り当てられた際、対戦相手のファンやメディアから「父親がリーベルファンだから判定が偏るのではないか」という根拠のない疑念や猛烈なプレッシャーを浴びせられたことがあります。
また、2024年11月に行われたウラカン対ボカ・ジュニアーズの試合では、ウラカンに対して一度はペナルティキックを与えたものの、その後にVARの介入を受けて自身の判定を取り消したシーンがあり、メディアやサポーターから厳しい監視の目に晒されました。
しかし、このような強烈なバッシングや「審判一家のプレッシャー」に晒されても、彼は冷静さを失わず自身のスキルを磨き続けてきました。VARとしての優れた分析能力と、スタジアムの異様な熱気にも動じないタフなメンタリティは、こうしたアルゼンチン国内での修羅場を通じて鍛え上げられたものです。
まとめ
偉大な名審判であった父の背中を追い、アルゼンチンの過酷なリーグで主審としての確固たるキャリアを築き上げたエルナン・マストランへロ氏。父親の所属クラブ愛に起因する心無い批判や、国内での強烈なプレッシャーを跳ね除け、彼は「映像判定のスペシャリスト」としての才能を開花させました。
コパ・リベルタドーレス決勝やクラブワールドカップでの経験を経て、2026年北中米W杯では南米を代表するVAR専任担当として大会に参加します。南米特有の激しいマリーシア(ずる賢さ)やコンタクトプレーを知り尽くした彼が、モニター越しに見せる的確な眼力と冷静なジャッジは、大会の公平性を守る上で極めて重要です。世界最高峰のピッチで戦う選手たちとともに、VARルームで試合を裏からコントロールするマストランへロ氏の仕事ぶりにも、ぜひ熱い視線を注いでみてください。
【免責事項】
本記事に記載されている経歴、統計データ、担当試合の記録、および審判員の判定傾向に関するエピソードや見解は、執筆時点での情報および公開データに基づく独自の分析レポートです。サッカーの競技規則や大会レギュレーション、審判員の選出・役割の割り当て等は、今後の各連盟の決定により変動する可能性があります。本記事の内容は特定の判定の正当性を完全に断定するものではありません。最新かつ詳細な公式記録等については、FIFAやCONMEBOLなどの公式発表をご確認ください。








