「いや、そこにパス出せるの?」
「というより、そもそも味方を見ていたの?」
川崎フロンターレの試合で、思わず二度見したくなるプレーが飛び出しました。
2026年9月6日に行われた明治安田J1リーグ第6節、川崎フロンターレ対清水エスパルス。川崎Fが3-1で勝利した一戦で大きな話題を集めたのが、DFフィリップ・ウレモヴィッチが見せた“結果的にノールックパス”です。
しかも、よくある「相手をだますために逆方向を向く」というノールックパスではありません。
ウレモヴィッチは相手との接触後、顔付近を手で覆いながらボールを味方へつないだのです。そのパスから攻撃が続き、最後はマルシーニョが勝ち越しゴール。中継では「いないいないばあパス」とも表現され、SNSでも注目を集めました。
偶然なのか、技術なのか、それとも長年の経験が生んだプレーなのか。
今回は川崎フロンターレのフィリップ・ウレモヴィッチについて、これまでのキャリアやプレースタイル、そして清水戦で生まれた異例の“ノールックパス”からマルシーニョの決勝点までを詳しく振り返ります。
1. フロンターレサポ必見!ウレモヴィッチとは何者なのか?
元クロアチア代表の実力派センターバック
フィリップ・ウレモヴィッチは1997年2月11日生まれ、クロアチア出身のDFです。身長184cm、体重81kgで、主戦場はセンターバック。
川崎フロンターレには2025年8月、クロアチアの名門ハイデュク・スプリトから完全移籍で加入しました。
そして何より見逃せないのが、クロアチア代表経験を持っていることです。
U-19、U-21代表を経てA代表まで上り詰め、2020年にはクロアチア代表として6試合に出場。UEFAネーションズリーグでもプレーしています。
センターバックだけでなく右サイドバックにも対応できる守備者であり、欧州で培ってきた経験値は現在の川崎Fでも大きな武器になっています。
2. クロアチアからロシア、イングランド、ドイツへ…ウレモヴィッチのキャリア
10代からキャプテンを任されたリーダータイプ
ウレモヴィッチのキャリアは、地元クロアチアのHNKツィバリアからスタートしました。
17歳でトップチームデビューを果たし、その後は国内屈指の名門ディナモ・ザグレブへ移籍。セカンドチーム時代には若くしてキャプテンを任されるなど、早い段階からリーダーシップを評価されていた選手です。
その後、スロベニアのオリンピア・リュブリャナへ渡ると状況が大きく変わります。
加入後はリーグ戦18試合すべてにフル出場し、チームは後半戦無敗。リーグとカップの2冠を達成しました。
そこからロシアのルビン・カザンへステップアップし、さらにイングランドのシェフィールド・ユナイテッド、ドイツのヘルタ・ベルリン、そして母国のハイデュク・スプリトを経て川崎フロンターレへ。
クロアチア、スロベニア、ロシア、イングランド、ドイツ、日本。
これだけ異なる文化と戦術の中でプレーしてきた経験こそ、ウレモヴィッチの大きな財産と言えるでしょう。
3. ウレモヴィッチのプレースタイルは?
最大の武器は激しいデュエルとボールの落下点予測
ウレモヴィッチという選手を一言で表現するなら、「相手FWが嫌がるセンターバック」です。
派手なドリブルや華麗なロングフィードを連発するタイプではありません。
最大の特徴は対人守備。
相手との距離を一気に詰め、身体をぶつけ、ボールを奪う。さらに184cmとセンターバックとして突出した長身ではないものの、ボールの落下地点を読む能力にも優れていると評価されています。
また、周囲へのコーチングを欠かさず、クロアチア代表やルビン・カザンでは右サイドバックでもプレー。戦術への適応力も高いDFです。
そして今回の清水戦で生まれたプレーには、そんなウレモヴィッチの「球際の強さ」と「瞬間的な判断」が凝縮されていました。
4. 仲間も相手も欺いた!?話題の“ノールックパス”
事件が起きたのは1-1で迎えた後半32分
2026年9月6日のJ1第6節。
川崎Fは試合開始早々、持山匡佑が開始1分に先制。実際には開始22秒という電光石火のゴールでした。
さらに清水は前半41分に住吉ジェラニレショーンが退場し、川崎Fは数的優位を得ます。
ところが、そう簡単にはいきません。
後半23分、オ・セフンにPKを決められて1-1。
1人多い川崎Fが追いつかれるという、ホーム側にとって何とも嫌な空気が漂い始めます。
そんな雰囲気を吹き飛ばしたのが、後半32分の攻撃でした。
顔を覆ったまま出したパスが味方へ
川崎Fの攻撃が一度止まり、清水のオ・セフンがボールを収めようとした場面。
そこへウレモヴィッチが猛烈にチャージします。
持ち味である対人の強さを発揮してボールを奪い返した――ここまでは、いかにもウレモヴィッチらしいプレーでした。
問題は、その直後です。
接触の影響があったのか、ウレモヴィッチは顔付近を手で覆うような格好になります。
普通なら、その瞬間にプレーが止まっても不思議ではありません。
しかし、止まらない。
顔を手で覆ったまま、ボールを味方のデリキ・ラセルダへパス。
「見えているのか?」
そう言いたくなる体勢から、きっちり味方につないでしまいました。
日刊スポーツによると、中継でもこのプレーは「いないいないばあパス」などと表現され、SNSでは「すごいノールック」といった反応が集まりました。
一般的なノールックパスは、「味方を見ないことで相手をだます」技術です。
ところが今回の場合は少し違います。
味方を見ないというより、顔そのものを覆っている。
相手だけでなく、映像を見ていたサポーター、実況席、場合によってはパスを受けた味方まで「そこから出すの?」と思ったかもしれません。
まさに、仲間も相手も欺く“究極のノールックパス”です。
5. “珍プレー”からマルシーニョの決勝点へ
ウレモヴィッチ→デリキ→マルシーニョ
もちろん、面白いだけならここまで大きな話題にはなりません。
このパスが、そのまま勝ち越しゴールにつながったからこそ価値があります。
流れを整理すると、
ウレモヴィッチがオ・セフンからボールを奪取
↓
顔を覆いながらデリキ・ラセルダへパス
↓
デリキがペナルティエリア内でボールをつなぐ
↓
マルシーニョが右足でフィニッシュ
↓
川崎Fが2-1と勝ち越し
という形でした。
Jリーグ公式記録でも、ウレモヴィッチのパスからデリキ・ラセルダにつながり、デリキのラストパスをマルシーニョが決めたことが記録されています。公式上のアシストはデリキですが、その一つ前のプレーを作ったウレモヴィッチの貢献は非常に大きなものでした。
6. なぜこのゴールが生まれた?最大の要因は「プレーを止めなかったこと」
相手が一瞬緩んだ隙を逃さなかった
この得点で最も興味深いのは、技術そのもの以上にウレモヴィッチがプレーを切らなかったことです。
顔を押さえるほどの状況になれば、「ファウルだったのでは?」とアピールしたり、その場に倒れ込んだりしてしまう選手も珍しくありません。
しかしウレモヴィッチは、まずボールを味方へつないだ。
これが重要でした。
接触があり、相手も一瞬「プレーが止まるのではないか」という空気になりかけた中、川崎Fだけは攻撃を継続。
そこで生まれたわずかなテンポの差が、清水守備陣の対応を遅らせることにつながりました。日刊スポーツも、この一連の場面で相手の足が止まり、その隙を川崎Fが突いたと伝えています。
サッカーでは、笛が鳴るまでプレーは続きます。
当たり前の話ですが、90分間それを徹底するのは簡単ではありません。
ウレモヴィッチの“ノールックパス”は珍プレーに見えて、実は非常にサッカーらしい「プレーを切らさない執念」から生まれたゴールだったとも言えるでしょう。
7. 実はウレモヴィッチらしさ満載のプレーだった
華麗さではなく「粘り強さ」でチャンスを作る
映像だけ切り取れば、
「顔を隠して適当に蹴ったら味方に渡った」
ようにも見えるかもしれません。
しかし、ウレモヴィッチという選手のキャリアを知ると、少し違う見方ができます。
そもそも彼の最大の強みは、華麗なテクニックではありません。
球際で負けない。
身体を張る。
最後までボールを追う。
相手に自由を与えない。
プレーを途中で投げ出さない。
そうした“粘り強さ”で欧州各国を渡り歩いてきたDFです。
清水戦の場面も、最初にオ・セフンへ強く寄せなければ始まりませんでした。
そこでボールを奪った。
接触してもプレーをやめなかった。
そして味方につないだ。
結果的に、その先でマルシーニョが決めた。
つまり、あのゴールは偶然の珍プレーだけで完成したわけではありません。
ウレモヴィッチらしい守備強度と執念が、偶然にも最高に面白い“ノールックパス”という形になって現れた。
そう考えると、このプレーの味わいはさらに深くなります。
8. まとめ:歴史に残る?“いないいないばあパス”から生まれた貴重な勝ち越し点
川崎フロンターレが清水エスパルスを3-1で下したJ1第6節。
開始早々に持山匡佑が先制し、後半にオ・セフンのPKで追いつかれながらも、77分と90分にマルシーニョが2ゴールを決め、川崎Fが今季2勝目を挙げました。
その中でも、何度でも映像を見返したくなるのが2点目。
ウレモヴィッチが球際で奪い返し、顔を覆いながらデリキ・ラセルダへパス。そのボールがマルシーニョの決勝点へつながりました。
狙って“ノールック”にしたわけではないからこそ面白い。
それなのにパスは正確につながっているから、さらに面白い。
そして最終的にゴールまで生まれているのだから、出来すぎています。
華麗なスルーパスでも、豪快なロングシュートでもありません。
それでもこうした一瞬のプレーが、試合後にサポーターの記憶に強烈に残る。
これもサッカーの面白さでしょう。
今後ウレモヴィッチが川崎Fで長く活躍したなら、この清水戦の“いないいないばあパス”は、「そういえば、あんなプレーもあったよね」と語り継がれる名場面になるかもしれません。
川崎フロンターレの試合を見る際は、ゴールを決める選手だけでなく、その数秒前に何が起きていたのかにもぜひ注目してみてください。
思わぬところに、得点を生んだ本当の主役が隠れているかもしれません。
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