2026年8月26日、IAIスタジアム日本平で行われた天皇杯 JFA 第106回全日本サッカー選手権大会2回戦「清水エスパルス vs FC大阪」。
J1の清水が順当に勝ち上がる――試合前にはそんな展開を予想した人も少なくなかったはずです。しかし、実際に待っていたのは120分間に及ぶ大苦戦でした。
FC大阪が前半17分に菅原龍之助のゴールで先制。清水は後半62分、ハーフタイムから投入されたオ・セフンが同点弾を決め、試合は延長戦へ。そして延長前半3分、松崎快が勝ち越しゴールを奪い、清水が2-1で辛くも3回戦進出を決めました。
ただし、単純に「J1がJ3を逆転した試合」と片付けるには惜しい一戦です。
FC大阪は清水を相手に堂々と渡り合い、公式記録ではシュート数でも清水の14本を上回る16本。さらに前半にはPKを獲得するなど、ジャイアントキリングまであと一歩に迫りました。
この記事では、両チームのスターティングメンバー、120分間の試合展開、勝敗を分けたポイント、そして清水がここまで苦しんだ理由を詳しく振り返ります。
目次
- はじめに:想像以上に苦しんだJ1清水
- 清水エスパルスvsFC大阪のスタメン
- 【前半】FC大阪がセットプレーから先制
- 【後半】オ・セフン投入で清水の攻撃が変化
- 【延長戦】松崎快の一撃が勝負を決める
- なぜ清水はFC大阪に苦戦したのか?
- この試合最大の見どころ3選
- まとめ:勝った清水、敗れてなお存在感を示したFC大阪
- 免責事項
1. はじめに:想像以上に苦しんだJ1清水
天皇杯らしい試合だった――。
120分を見終えたとき、まず浮かぶのはそんな言葉ではないでしょうか。
カテゴリーで見れば清水エスパルスはJ1、FC大阪はJ3。さらに会場は清水のホーム、IAIスタジアム日本平です。
しかし、8月29日に柏レイソルとのJ1リーグ戦を控える清水はターンオーバーを実施。対するFC大阪も普段出場機会の限られている選手を含むメンバー構成ながら、立ち上がりからまったく臆することなく清水へ圧力を掛けました。
清水はこの試合前、J1リーグ開幕3試合で1勝2敗。横浜F・マリノス戦、セレッソ大阪戦をともに0-1で落として2連敗中で、攻撃面にも課題を抱えていました。
一方のFC大阪はJ3開幕3試合を1勝2分けと無敗でスタートしており、チームには勢いがありました。
その両者の状態が、そのまま前半の内容に表れます。
2. 清水エスパルスvsFC大阪のスタメン
清水エスパルス
GK
沖 悠哉
DF
高木 践
高橋 祐治
蓮川 壮大
吉田 豊
MF
ディエギーニョ
小泉 慶
小塚 和季
FW
松崎 快
カピシャーバ
大畑 凜生
キャプテンは吉田豊。高橋祐治にとっては、約1年2カ月ぶりとなる公式戦復帰でした。
FC大阪
GK
韓 峻領
DF
坂本 翔
桑子 流空
山下 諒時
舘野 俊祐
MF
小川 嵩翔
菅原 龍之助
吉田 源太郎
FW
夏川 大和
伊佐 耕平
森村 俊太
キャプテンは舘野俊祐。FC大阪はセットプレーや前線のフィジカルを生かしながら、セカンドボールを回収して前へ出る戦い方を徹底しました。
3. 【前半】FC大阪がセットプレーから先制
試合開始から目についたのは、FC大阪の思い切りの良さでした。
清水がボールを持つ時間があっても、FC大阪は最終ラインをコンパクトに保ち、簡単に中央を使わせません。ボールを奪えば前へ素早く運び、セットプレーも積極的に狙います。
そして前半17分。
FC大阪が右CKを獲得すると、舘野俊祐のボールからゴール前で競り合いが生まれ、最後は菅原龍之助が仕留めて先制します。公式記録でも、右CKから始まった一連のプレーとして記録されています。
FC大阪の藪田光教監督も試合後、セットプレーは自分たちの強みであり、「用意してきたもの」を出せたという趣旨のコメントを残しています。
決して偶然の1点ではありませんでした。
さらに清水にとって危険だったのが、FC大阪にPKを与えた場面です。
このPKは得点にはつながりませんでしたが、もし決まっていれば0-2。試合の様相は完全に変わっていた可能性があります。公式記録でもFC大阪のPKは1本と記録されており、藪田監督も試合後に「あそこで決め切れていれば」という趣旨で振り返っています。
前半を終えて清水0-1FC大阪。
カテゴリー差を感じさせるどころか、むしろFC大阪のほうが狙いを明確に表現した45分でした。
4. 【後半】オ・セフン投入で清水の攻撃が変化
このままではまずい。
吉田孝行監督もそう判断したのでしょう。
清水はハーフタイムに一気に動きます。
小塚和季 → ジャーメイン良
大畑凜生 → オ・セフン
攻撃陣に高さとパワーを加えました。
吉田監督は試合後、FC大阪の4枚の守備ラインがコンパクトだったため、後半はサイドチェンジを増やし、クロスを入れた後のゴール前の迫力を高めることを指示したと説明しています。
この修正が結果につながったのが62分です。
右サイドから高木践がボールを送り、FC大阪守備陣がクリア。しかし完全には跳ね返せず、こぼれたボールに反応したオ・セフンがワンタッチの左足シュート。
ネットを揺らし、清水が1-1に追いつきます。
前半は中央で攻撃が詰まる場面も多かった清水ですが、オ・セフンという明確なターゲットが入ったことで、クロスやセカンドボールからゴールへ迫れるようになりました。
それでもFC大阪は崩れません。
66分には木匠貴大と長野星輝、75分にはヴィニシウス・ソウザと木村大輝を投入。清水も81分に藤井智也を送り込みましたが、90分以内には決着せず、勝負は延長戦へ持ち越されました。
5. 【延長戦】松崎快の一撃が勝負を決める
決勝点が生まれたのは、延長戦に入ってわずか3分後でした。
93分、松崎快。
公式記録によると、GK沖悠哉から前線へ送られたボールを松崎が右サイドで受け、自ら運びながら中央へ侵入。そして最後は左足シュートを突き刺しました。
これで清水が2-1。
吉田監督も試合後、松崎について、得点だけでなく前半からライン間でボールを受け、サイド突破やゴールへ向かうプレーを高く評価しています。
まさにこの試合のMVP候補と言っていい働きでした。
FC大阪も最後まで前へ出続けましたが、清水は高橋祐治らが身体を張って守備。高橋は約1年2カ月ぶりの公式戦で120分間を戦い抜き、終盤には足をつりながらもピッチに立ち続けました。
そのまま試合終了。
清水エスパルス 2-1 FC大阪(延長)
清水が薄氷の勝利で3回戦への切符を手にしました。
6. なぜ清水はFC大阪に苦戦したのか?
理由① FC大阪のゲームプランが明確だった
FC大阪は清水相手だからといって、自陣に引きこもったわけではありません。
長いボールを使う。
セカンドボールを拾う。
セットプレーを生かす。
守備では4バックをコンパクトに保つ。
やるべきことが非常にはっきりしていました。
実際、公式記録ではシュート数が清水14本、FC大阪16本。下位カテゴリーのFC大阪がシュート数で上回った事実は、この試合が決して一方的ではなかったことを物語っています。
理由② 清水の前半はプレーが連続していなかった
吉田監督が試合後に最も厳しく指摘した部分です。
失点につながる前の守備、PKを与えるまでの守備などについて、「その瞬間」だけではなく、その一つ前のプレーから準備が足りなかったという趣旨で振り返っています。
球際へ寄せる。
味方のバックパスに合わせてポジションを取る。
クリアの方向を考える。
そうした細かな積み重ねが不足し、FC大阪に試合の主導権を渡してしまいました。
理由③ オ・セフン投入で“基準点”ができた
一方、清水が流れを変えられた最大の要因は後半の選手交代でしょう。
オ・セフンとジャーメイン良を投入したことで、前線のパワーが一気に増しました。
特にオ・セフンが中央にいることでクロスを入れる意味が生まれ、FC大阪の最終ラインを押し下げることに成功。
その結果として62分の同点ゴールが生まれています。
理由④ 最後はJ1側の個の力が勝敗を分けた
FC大阪の戦術は機能していました。
しかし延長戦に入ると、120分間を通したフィジカルの消耗に加え、一つのプレーで局面を変えられる選手の存在が大きくなります。
そこで違いを見せたのが松崎快でした。
右サイドでボールを受けてから自ら運び、最後は左足で仕留める。
チーム戦術だけでは防ぎ切れない「個」の一撃が、最後にカテゴリー差を結果へ反映させたと言えるでしょう。
7. この試合最大の見どころ3選
① 菅原龍之助の17分先制ゴール
FC大阪が準備してきたセットプレーがJ1清水を攻略。
「格下がたまたま先制した」のではなく、自分たちの武器を使って奪った1点だったことが重要です。
② FC大阪が逃したPK
この試合最大の「もしも」です。
1-0の展開でFC大阪が追加点を奪っていれば、清水は後半開始から2点を追わなければならなかった可能性があります。
藪田監督が試合後に「詰めの甘さ」に触れたように、この1本は結果を大きく左右した場面でした。
③ 松崎快の延長決勝ゴール
最後に勝敗を決めたのは松崎の左足でした。
清水が苦しみながらも勝ち切れたのは、個人でゴールまで持ち込める選手が最後に仕事をしたからです。
吉田監督が松崎のパフォーマンスを高く評価したのも納得できる120分でした。
8. まとめ:勝った清水、敗れてなお存在感を示したFC大阪
最終スコアは清水エスパルス2-1FC大阪。
結果だけを見れば、J1クラブがJ3クラブを破った順当なものです。
しかし内容まで見れば、その印象は大きく変わります。
FC大阪は前半17分に先制し、PKによる追加点のチャンスも作りました。120分間のシュート数でも清水を上回り、「あと一歩」でジャイアントキリングというところまでJ1クラブを追い詰めています。
一方の清水にとっては、課題と収穫が同居した試合でした。
前半の守備や試合への入り方には大きな反省材料が残ったものの、ビハインドから選手交代と戦術修正によって追いつき、最後は延長戦で勝ち切った。
そして、約1年2カ月ぶりに公式戦へ戻ってきた高橋祐治が120分間ピッチに立てたことも、今後を考えれば非常に大きな出来事です。
天皇杯は、カテゴリーやリーグ順位だけでは勝敗を語れません。
その怖さを改めて感じさせた清水対FC大阪。
清水は「勝ったこと」を次につなげられるのか。そしてFC大阪は、J1クラブをここまで追い詰めた自信をJ3リーグでの戦いへ還元できるのか。
両チームにとって、単なる天皇杯2回戦以上の意味を持つ120分になったのではないでしょうか。
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