2026年8月26日(水)、味の素フィールド西が丘で行われた「天皇杯 JFA 第106回全日本サッカー選手権大会」2回戦、東京ヴェルディvsザスパ群馬。
試合は東京ヴェルディが4-1で勝利し、次のラウンドへ駒を進めました。
最終スコアだけを見ると東京ヴェルディの快勝です。しかし、実際の試合は「J1クラブが最初から最後まで圧倒した」という単純な90分ではありません。
東京ヴェルディが24分に神田奏真のゴールで先制したものの、ザスパ群馬も後半65分に出間思努が同点弾。スコアは一度1-1に戻りました。
そこからわずか5分後。東京ヴェルディがPKを獲得し、白井亮丞が勝ち越しゴール。さらに終盤には途中出場の熊取谷一星、川村楽人が立て続けに得点し、最終的には4-1まで差が広がりました。公式記録では前半1-0、後半3-1。入場者数は2,569人、気温32.1度という暑さの残る西が丘での一戦でした。
では、なぜ最終的に3点差がついたのでしょうか。
本記事では、両チームのスターティングメンバーから試合の流れ、勝負を決定づけたシーン、東京ヴェルディが勝利できた理由、そしてザスパ群馬が見せた可能性まで詳しく振り返ります。
目次
- はじめに:4-1でも「一方的」ではなかった西が丘の90分
- 東京ヴェルディvsザスパ群馬の試合結果・スタメン
- 【前半分析】神田奏真の先制弾と東京Vが見せた“前への姿勢”
- 【後半分析】出間思努の同点弾から白井亮丞のPKへ――勝負を分けた5分間
- なぜ4-1になったのか?勝敗を分けた3つのポイント
- まとめ:東京Vには自信、群馬にはスコア以上の課題と収穫
1. はじめに:4-1でも「一方的」ではなかった西が丘の90分
天皇杯の面白さは、リーグ戦とは違う「一発勝負」にあります。
カテゴリーや順位に関係なく、90分、場合によっては延長戦・PK戦で勝者が決まるため、ひとつのミスやセットプレー、選手交代が試合の流れを大きく変えます。
今回もまさにそうでした。
東京ヴェルディは今季のリーグ戦で思うように結果を残せていない中、この試合が今季公式戦初勝利。城福浩監督も試合後、「前への姿勢を攻守においてしっかり見せた」ことが結果につながったと振り返っています。一方で「2点目をなかなか取れなかったクオリティは課題」とも語っており、4-1というスコアとは少し違う試合の難しさがあったことも認めています。
実際、65分にはザスパ群馬が1-1に追いついています。
つまり、この試合を読み解くうえで重要なのは「東京Vが4点取ったこと」だけではありません。
1-1になった直後にどちらが試合を自分たちの側へ引き戻したのか。
そこに勝敗を分けた最大のポイントがありました。
2. 東京ヴェルディvsザスパ群馬の試合結果・スタメン
試合結果
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 大会 | 天皇杯 JFA 第106回全日本サッカー選手権大会 2回戦 |
| 開催日 | 2026年8月26日(水) |
| キックオフ | 18:30 |
| 会場 | 味の素フィールド西が丘 |
| 結果 | 東京ヴェルディ 4-1 ザスパ群馬 |
| 前半 | 東京V 1-0 群馬 |
| 後半 | 東京V 3-1 群馬 |
| 入場者数 | 2,569人 |
| 天候・気温 | 晴・32.1度 |
得点者は東京ヴェルディが24分・神田奏真、70分・白井亮丞、89分・熊取谷一星、90分・川村楽人。ザスパ群馬は65分に出間思努がゴールを記録しました。
東京ヴェルディ スターティングメンバー
| Pos. | No. | 選手 |
|---|---|---|
| GK | 21 | 長沢祐弥 |
| DF | 36 | 松田陸 |
| DF | 15 | 鈴木海音 |
| DF | 29 | 佐古真礼 |
| MF | 7 | 松橋優安 |
| MF | 20 | 食野壮磨 |
| MF | 10 | 森田晃樹 |
| MF | 18 | 溝口修平 |
| FW | 24 | 仲山獅恩 |
| FW | 27 | 白井亮丞 |
| FW | 38 | 神田奏真 |
東京Vでは森田晃樹が今季公式戦初出場。城福監督によれば、本格的にチームへ合流できたのは試合週で、出場については本人やメディカルスタッフと慎重に判断した上での起用でした。森田は45分間をプレーし、後半開始から柴戸海と交代しています。
ザスパ群馬 スターティングメンバー
| Pos. | No. | 選手 |
|---|---|---|
| GK | 88 | キム ジェヒ |
| DF | 2 | 中村涼 |
| DF | 30 | 小柳達司 |
| DF | 25 | 中野力瑠 |
| MF | 21 | 池下由也 |
| MF | 4 | 玉城大志 |
| MF | 42 | 原田高虎 |
| MF | 69 | 出間思努 |
| FW | 22 | 貫真郷 |
| FW | 17 | 百田真登 |
| FW | 18 | 田中翔太 |
ザスパ群馬は後半7分にあたる52分、早い段階で中村涼と百田真登を下げ、山原康太郎と中島大嘉を投入。1点を追う展開の中で動きを加えました。
3. 【前半分析】神田奏真の先制弾と東京Vが見せた“前への姿勢”
前半の東京ヴェルディから感じられたのは、リーグ戦での迷いを振り払うような積極性でした。
城福監督が試合後に強調したのも、まさにこの部分です。
守備では前から相手を捕まえに行き、ボールを持てば安全な横パスだけではなく、前線へボールを届けて相手最終ラインを動かしていく。
その姿勢が結果につながったのが24分でした。
神田奏真が東京ヴェルディ加入後初ゴールとなる先制点。
神田本人によると、相手がクロスに対して下がる傾向を把握しており、白井亮丞がボールを持った場面でマイナス方向に待ったことが得点につながりました。城福監督も、この形は試合前のロッカールームで確認していたクロスのパターンだったと明かしています。
ここは非常に興味深い場面です。
偶然こぼれてきたボールを押し込んだだけではなく、相手守備の特徴を分析したうえで準備していた形が実際のゴールにつながったからです。
さらに神田にはクロスバーを直撃する惜しいシュートもあり、本人も「2点目、3点目を取れる場面があった」と試合後に振り返っています。東京Vとしては前半のうちに試合を決めてもおかしくなかった一方、1-0のままハーフタイムを迎えたことが、後半を難しくした要因でもありました。
4. 【後半分析】出間思努の同点弾から白井亮丞のPKへ――勝負を分けた5分間
後半に入ると両監督が動きます。
東京ヴェルディは46分、松橋優安に代えて新井悠太、森田晃樹に代えて柴戸海を投入。
対するザスパ群馬も52分に山原康太郎と中島大嘉を送り込み、追いつくためのカードを早い時間帯で切りました。
そして65分。
ザスパ群馬の出間思努がゴールを決め、1-1。
東京Vとしては前半から追加点を奪える場面がありながら決め切れず、その代償を払う形になりました。
一発勝負の天皇杯では最も嫌な展開です。
格上とされる側が1点をリードしながら仕留め切れず、後半途中に追いつかれる。こうなると追いついた側には勢いが生まれ、スタジアムの空気も変わります。
ところが、この日の東京Vはここから崩れませんでした。
同点からわずか5分後の70分、群馬陣内のペナルティエリアで生まれたスクランブルから東京VがPKを獲得。白井亮丞がこれを決めて2-1とします。
城福監督はこのPKについて、仲山獅恩が足を止めずペナルティエリア内でボールに触ったことで混戦が生まれたと評価しています。つまり勝ち越し点も、東京Vが失点後に消極的にならず、もう一度前へ出た結果でした。
この65分から70分までの5分間こそ、試合最大のターニングポイントだったと言えるでしょう。
もし群馬が1-1の時間を長く維持できていれば、東京Vには焦りが生まれ、試合はまったく違う方向へ進んだ可能性があります。
しかし、同点の余韻が残っているうちに東京Vが再びリードを奪った。
ここで心理的な主導権は再びホーム側へ戻りました。
そして終盤。
72分から出場した熊取谷一星が89分に3-1となるゴール。さらに88分にピッチへ入ったばかりの川村楽人が90分にダメ押しとなる4点目を奪います。川村にとってはプロ初ゴールでした。
最終スコアは4-1。
ただし89分までは2-1だったことを忘れてはいけません。
5. なぜ4-1になったのか?勝敗を分けた3つのポイント
ポイント① 東京Vが失点後に「前への姿勢」を失わなかった
この試合で最も評価すべきなのは、東京Vが1-1に追いつかれた直後の反応でしょう。
一発勝負では、格下相手に追いつかれた瞬間に「失点したくない」という心理が働き、プレーが急に消極的になるケースがあります。
しかし東京Vは逆でした。
再び相手陣内へ入り、70分にはPKを獲得。わずか5分でリードを取り返します。
城福監督が試合後に話した「前への姿勢を攻守においてしっかり見せた」という言葉は、この時間帯を象徴しています。
ポイント② 神田・白井・仲山ら前線の流動性
東京Vの攻撃では、固定されたポジションだけでプレーするのではなく、前線の選手が入れ替わりながら相手守備に判断を迫る場面が見られました。
神田も試合後、「自分と白井が入れ替わってもいい」「ポジションにとらわれないことが相手にとって嫌」と語っています。
先制点では白井と神田の関係が結果につながり、勝ち越しPKの場面では仲山が最後までプレーを止めなかったことが混戦を生みました。
個人能力だけではなく、複数の若いアタッカーが連動したことが東京Vの攻撃を読みにくくしています。
ポイント③ 終盤に表れた選手層と“仕留める力”の差
この試合が4-1になった最大の理由のひとつが終盤です。
72分投入の熊取谷が89分に得点。
88分投入の川村が90分に得点。
途中出場選手が立て続けにネットを揺らしました。
2-1で試合を終わらせることもできた東京Vですが、そこで守り切るだけにシフトせず、スペースが増えた終盤に追加点を奪いに行きました。
一方の群馬から見れば、2-1のままでは敗退になるため、当然リスクを負って前へ出ざるを得ません。
その結果としてピッチにスペースが生まれ、フレッシュな東京Vの攻撃陣にそこを突かれた。
したがって、「4-1=90分間ずっと3点分の実力差があった」と見るのは少し違います。
65分には1-1。89分になるまでは2-1です。
群馬にも試合を揺らす時間はありました。
ただ、その時間を勝利へ結び付けられなかった一方で、東京Vは勝負どころを逃さず、最後は選手層も生かしてスコアを広げた。この差が最終的な「4-1」となって表れました。
6. まとめ:東京Vには自信、群馬にはスコア以上の課題と収穫
天皇杯2回戦、東京ヴェルディvsザスパ群馬は4-1で東京ヴェルディの勝利に終わりました。
東京Vにとって何より大きいのは、今季公式戦初勝利を手にしたことです。
神田奏真の加入後初ゴール、白井亮丞の勝ち越し弾、熊取谷一星の追加点、そして川村楽人のプロ初ゴール。さらに森田晃樹が公式戦へ復帰し、柴戸海も加入後初出場を果たすなど、「勝った」という事実以外にも今後につながる材料の多い90分となりました。
ただし、東京Vに課題がなかったわけではありません。
前半から追加点のチャンスがありながら仕留め切れず、65分には同点に追いつかれています。城福監督自身が「2点目をなかなか取れなかった」ことを課題として挙げているように、J1のリーグ戦で同じ展開になれば、そのまま勝点を落とす可能性もあります。
一方、敗れたザスパ群馬も、スコアだけで悲観する必要はありません。
後半に選手交代を仕掛け、65分には出間思努が同点ゴール。一度はJ1クラブを本気で慌てさせる状況を作りました。
だからこそ悔やまれるのは、その直後です。
追いついた後の5分間をどう戦うか。
そこで2-1とされ、さらに終盤にリスクを負ったところを突かれて2失点。カテゴリーが上の相手との一発勝負では、こうした「得点直後・失点直後の数分間」のゲーム管理が、そのまま勝敗につながります。
4-1という結果以上に見応えがあった東京ヴェルディvsザスパ群馬。
この試合を象徴するのは89分、90分の連続ゴールではなく、むしろ1-1になった65分から、東京Vが再び勝ち越した70分までの5分間だったのかもしれません。
東京Vは追いつかれても自分たちのスタイルを手放さず、再び前へ出た。
その姿勢が今季公式戦初勝利を引き寄せた一戦でした。
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