2026年W杯に向けて、国際サッカー連盟(FIFA)は全6大陸から170名の審判団(主審52名、副審88名、VAR担当30名)を選出しました。この世界最大の祭典において、中東カタールの審判団は極めて高い評価を受けており、アブドゥルラフマン・アル・ジャシム主審らと共に、ハミス・アル=マッリ氏がVAR担当の「ビデオ・マッチ・オフィシャル」として堂々の選出を果たしました。
彼が注目される最大の理由は、その「映像を通じた客観的で正確な分析能力」です。現代サッカーでは、ペナルティエリア内のわずかな接触や、ミリ単位のオフサイド判定が勝敗を分けるため、VARルームに座る審判の経験と冷静さが不可欠です。アジアの審判界を牽引するカタールにおいて、主審としての豊富な現場経験を持ちながら、映像判定の第一人者としても活躍するアル=マッリ氏の存在は、W杯という極限のプレッシャー下で的確なジャッジを保証する要(かなめ)として大きな期待を集めています。
目次
- ハミス・アル=マッリのプロフィールと主な経歴
- これまでの主な実績と担当したビッグマッチ
- レフェリングの特徴と傾向
- まとめ
- 免責事項
ハミス・アル=マッリのプロフィールと主な経歴
世界的な大会で重責を担うアル=マッリ氏ですが、どのようなキャリアを経て現在の地位を築いたのでしょうか。彼の基本的なプロフィールは以下の通りです。
- 氏名:ハミス・モハメド・アル=マッリ(Khamis Mohammed Al-Marri)
- 生年月日:1984年7月6日(2026年W杯開催時:約41歳)
- 国籍:カタール
- 国際審判員(FIFA)登録年:2010年
- 主な活動舞台:カタール・スターズリーグ、AFC主催大会
アル=マッリ氏は、2010年という非常に若い段階でFIFAの国際審判員に登録され、以降10年以上にわたりアジアの第一線で活躍を続けてきました。彼を語る上で欠かせないのが、日本との深い関わりです。2023年6月から7月にかけて、日本サッカー協会(JFA)とカタールサッカー協会の「審判交流プログラム」の一環として来日し、日本の国内リーグ戦(Jリーグ)やカップ戦で主審を担当しました。日本のサッカーのスピードや文化を肌で知る、数少ない中東のレフェリーの一人です。
これまでの主な実績と担当したビッグマッチ
主審としてもVARとしても、彼はアジアのサッカー史に残る数々の重要なビッグマッチに関わってきました。
- AFCアジアカップでの活躍: 2019年のアラブ首長国連邦(UAE)大会、そして自国開催となった2023年のカタール大会で審判団に選出されました。特に2023年大会では、グループステージの「日本代表 対 インドネシア代表」という注目度の高い試合で主審を務め、的確なゲームコントロールを披露しています。
- AFCチャンピオンズリーグ(ACL)と国際予選: アジア最高峰のクラブ大会であるACLエリートにおいて、主審およびVARとして数々の試合を担当しています。また、2018年W杯に向けたアジア予選でも多くの試合を裁き、国際的な経験値を積み上げてきました。
- 各種国際トーナメントでのVAR担当: アラブカップ決勝などの大きなタイトルマッチでVARやアシスタントVARを歴任し、AFC U-23アジアカップでもVARとして大会の成功を支えました。
レフェリングの特徴と傾向
サッカーをより深く楽しむためには、審判の「判定の傾向」を把握することが重要です。主審およびVARとしてのアル=マッリ氏のプレースタイルを分析します。
1. 現場の感覚を活かした「的確なVAR介入」
彼の最大の強みは、長年ピッチ上で主審として選手たちの息遣いや接触の激しさを体感してきた経験が、VARルームでの判定に直結している点です。
現代のVAR運用において最も難しいのは、「主審の判定を尊重しつつ、明白な間違い(クリア・アンド・オブヴィアス・エラー)が起きた時だけ介入する」というバランス感覚です。アル=マッリ氏は無闇に試合を止めて映像確認を強要するのではなく、現場の主審の裁量を見極め、決定的なエラーの際にのみ正確な証拠を提示する冷静さを持っています。
2. カタール審判団との強固な連携
2026年W杯において、カタールからはアブドゥルラフマン・アル・ジャシム主審を中心とするチームが派遣されます。アル=マッリ氏は彼らと日頃のカタール国内リーグやアジア大会で何度もチームを組み、阿吽の呼吸で連携を図っています。スタジアムの異様な熱狂やプレッシャーの中で、インカム越しに的確な助言を送る彼の存在は、主審にとってこれ以上ない心強い味方となります。
また、ピッチ上で主審を務める際には、中東特有の感情的で激しいアピールに対しても毅然とした態度を取り、必要に応じて冷静なコミュニケーションで試合のヒートアップを防ぐゲームマネジメント能力の高さが評価されています。
まとめ
2010年に国際審判員となって以来、カタール国内だけでなく、AFCアジアカップやJリーグの舞台でも確かな足跡を残してきたハミス・アル=マッリ氏。主審としての豊富な現場経験をベースに、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)のスペシャリストとしての才能を開花させ、ついに2026年北中米W杯の切符を手にしました。
大会が48カ国に拡大され、多様なサッカースタイルが激突する本大会において、テクノロジーを用いた判定の正確さは勝敗を左右する生命線となります。彼がVARルームのモニター越しに見せる「アジア最高峰の眼力」が、W杯という巨大な舞台でどのような公平なジャッジを導き出すのか。ピッチを走る選手たちだけでなく、判定を裏から支える彼の仕事ぶりにも、ぜひご注目ください。
【免責事項】
本記事に記載されている経歴、統計データ、担当試合の記録、および審判員の判定傾向に関する見解は、執筆時点での情報および公開データに基づく独自の分析レポートです。サッカーの競技規則や大会レギュレーション、審判員の選出・割り当て状況等は、今後の各連盟の決定により変動する可能性があります。本記事の内容は特定の判定の正当性を断定するものではありません。最新かつ詳細な公式記録等については、FIFAやAFCなどの公式発表をご確認ください。







