「富士山ダービー」という言葉を聞いて、ピンとくる方はどれくらいいるでしょうか。清水エスパルスとヴァンフォーレ甲府による、静岡県と山梨県の対戦です。単なるご近所ダービーではなく、富士山という日本最大のシンボルを「どちらのものか」と争ってきた両県の宿命的なライバル関係が、このダービーの底流にあります。しかも行政トップ同士の合意から生まれた、日本でも珍しい「市長公認のダービー」でもあります。
富士山ダービーが生まれた2006年のドラマ
このダービーが誕生したきっかけは、2006年にヴァンフォーレ甲府がクラブ史上初のJ1昇格を果たしたことです。昇格初年度の開幕戦(2006年3月5日)の対戦相手が、隣県の雄・清水エスパルスだったことが全ての始まりになります。
この一戦をきっかけに記念グッズが発売されたり、サポーター同士の交流が活発になったりと盛り上がりが出てきました。そして同年7月、甲府市長と静岡市長が甲府市内で直接会談。行政・産業・スポーツなど幅広い分野で包括的な連携を推進することで合意し、ヴァンフォーレ甲府対清水エスパルスの一戦を「富士山ダービー」と正式に命名することが決まりました。
クラブ同士の自然発生的なライバル関係ではなく、市長同士の握手から生まれたダービー——これが富士山ダービーの独自性のひとつです。
甲府の経営危機からの復活があったからこそ
この文脈を理解するには、当時の甲府の状況も知っておく必要があります。
2000年代初頭、ヴァンフォーレ甲府は深刻な経営破綻の危機にありました。帳簿すら整備されておらず確定申告もできない状態で、クラブ消滅まで視野に入っていたほどです。山梨県知事らの尽力でなんとか崩壊を免れ、地道な再建を重ねてJ1昇格を果たした。
だからこそ、清水という名門との「ダービー」が成立したことは、甲府にとって単なる一試合ではありませんでした。地域に根ざした「おらが町のチーム」が、富士山という象徴を背負って隣県の強豪と対等に戦えるようになった——地域再生の証明として、このダービーは大きな意味を持ったわけです。
「富士山はどっちのもの?」という永遠の論争
富士山ダービーの熱さを理解するには、静岡と山梨の間にある「富士山の境界論争」も知っておくと面白いです。
富士山の山頂(8合目以上)は現在も県境が未確定のまま。1897年に境界調査が実施された時から両県が異議を唱え続け、2014年には両県知事が「世界遺産登録後も県境を画定しない方針」を確認するほど、決着のつかない問題として残っています。
| 立場 | 主張の中身 |
|---|---|
| 静岡県側(表富士) | 駿河湾越しに見える富士こそ東海道の旅人が見てきた正統の姿 |
| 山梨県側(裏富士) | 千円紙幣に描かれた本栖湖の逆さ富士、登山客数No.1の吉田口が誇り |
「裏富士」という呼ばれ方に山梨県民が強い抵抗を感じるというのも、なかなかリアルな話です。この「どっちが本家か」という争いが、サッカーの場でもダービーの熱量を自然に高めているわけです。
対戦成績:清水が長年リードも、甲府が猛追中
競技面では、歴史的に清水エスパルスが大きくリードしています。
| 年 | カテゴリ | 結果(甲府視点) | スコア |
|---|---|---|---|
| 2006年 | J1 | 敗戦 | 0-2 |
| 2006年 | J1 | 敗戦 | 0-4 |
| 2015年 | J1 | 勝利 | 2-0 |
| 2015年 | J1 | 引き分け | 2-2 |
| 2023年 | J2 | 勝利 | 1-0 |
J1リーグ戦の通算では2017年時点で甲府の1勝3分10敗と清水が圧倒していますが、面白いのがカップ戦での甲府の強さです。Jリーグカップでは甲府が2勝2分1敗と逆に勝ち越しており、2018年の天皇杯4回戦では当時J2だった甲府がJ1の清水を1-0で下す下克上も実現しています。
この天皇杯での勝利は、後に甲府が2022年天皇杯を優勝する伏線だったとも言われています。
マスコットのショーが「職人芸」と呼ばれるダービー
富士山ダービーを語る上で外せないのが、スタジアムで繰り広げられるマスコット同士の共演です。
清水エスパルスの「パルちゃん」とヴァンフォーレ甲府の「ヴァンくん」は、Jリーグファンの間で「職人芸」と称されるほどのパフォーマンス能力で知られています。ダービー当日には「スペシャルコラボショー」が恒例で、静岡県出身のアーティストユニット・電気グルーヴの楽曲「富士山」を使ったコミカルなダンスや、スタジアム全体での「富士山、富士山、高いぞ高いぞ富士山」コールが繰り広げられます。
地域のマスコットも集結するのが特徴で、例えば静岡市清水区の「シズラ」が甲府のスタジアムに応援に来るなど、行政連携がこういう形で可視化されるのも、このダービーならではの光景です。
「富士山めし」でも戦うスタジアムグルメ
もうひとつの見どころが、試合当日のスタジアムグルメです。富士山ダービーでは、富士山をモチーフにした限定グルメが並ぶ「富士山めし」が名物になっています。
| 店舗 | メニュー名 | 特徴 |
|---|---|---|
| やきまる内郡司 | 富士桜ポークウインナー富士山盛り | 3,776円・限定10食・選手サイン色紙付 |
| やきまる | 青春のトマト焼きそば富士山盛り | 山梨ご当地グルメを山盛りに |
| 伝説のすた丼屋 | すた丼富士山盛り | 1,200円・限定10食の爆盛り丼 |
| モグラハウス | 信玄唐揚げ富士山盛り | 1,000円・限定50食 |
| フォネットグループ | 青い富士山コーラ・クリームソーダ | 富士山の山肌をイメージした青色の飲料 |
3,776円というのは富士山の標高3,776メートルにちなんだ価格設定です。量の多さだけでなく、山梨ブランド豚の富士桜ポークなど地域の食文化を伝えるショーケースとしての役割も果たしています。
アウェイ側(清水)のスタグルがホーム側(甲府)のスタジアムにも出展するという相互販売も慣習になっており、食を通じた地域間交流がスタジアムの中で自然と生まれています。
富士山のオーバーツーリズム問題にも向き合う
最近では、富士山ダービーの場が富士山の世界遺産PRや環境保全の啓発の場としても活用されています。静岡県側が事前登録制度で登山者を管理し、山梨県側が通行規制や通行料徴収といった法的措置を取るなど、両県それぞれの対応が進んでいます。
試合会場での世界遺産PR活動は、両県の住民が「富士山という共有財産を守る」という意識を共有する場になっています。スポーツイベントを地域課題の解決に結びつけるという発想は、このダービーが単なるサッカーの試合を超えた存在になっていることを示しています。
まとめ
富士山ダービーは、2006年の市長同士の握手から始まった、日本でも珍しい「行政公認のダービー」です。清水と甲府の競技上の戦い、富士山の境界を巡る宿命的なライバル関係、マスコットの職人芸、富士山盛りのスタグル——これだけの要素が重なるダービーは他にありません。富士山が見える地域にお住まいの方は、ぜひ一度スタジアムで体感してみてください。

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