2026年9月2日に行われたJリーグ ヤマザキビスケット ルヴァンカップ1回戦、ガイナーレ鳥取vsRB大宮アルディージャ。
試合前のカテゴリーやリーグ戦の状況だけを見れば、J2首位を走る大宮が優位と考えた人は多かったはずです。しかし、終わってみればスコアは鳥取3-1大宮。J3の鳥取がJ2首位の大宮を破る、鮮烈なジャイアントキリングとなりました。
鳥取が素晴らしかったのは、ただ守って耐えただけではなかったこと。開始2分に先制すると、大宮がボールを握る時間が長くなっても慌てず、奪った後の攻撃をゴールまで結びつけました。一方の大宮は、ボール保持やシュート数では相手を上回りながらも、試合を決める「ゴール前の質」で大きな差をつけられています。
Jリーグ公式集計では、鳥取のシュート7本に対して大宮は14本。それでも結果は3-1でした。数字だけでは分からない「決定力」と「試合運び」の差が、そのままスコアに表れた一戦だったと言えるでしょう。
本記事では、鳥取vs大宮の試合結果、得点経過、戦術的なポイント、両チームのスタメン・途中出場選手の個人採点、そして今後に向けた課題と改善ポイントまで詳しく振り返ります。
1. 鳥取vs大宮の試合結果|J3鳥取がJ2首位を3-1で撃破
試合基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 大会 | Jリーグ ヤマザキビスケット ルヴァンカップ |
| ラウンド | 1回戦 |
| 開催日 | 2026年9月2日 |
| 会場 | Axisバードスタジアム |
| 結果 | ガイナーレ鳥取 3-1 RB大宮アルディージャ |
| 入場者数 | 1,241人 |
| 鳥取得点 | 藤田一途 2分、山本颯太 45分、57分 |
| 大宮得点 | 小林柚希 69分 |
鳥取は開始わずか2分、藤田一途がペナルティエリア外から右足を振り抜き先制。大宮にとっては、試合プランを組み立てる前にビハインドを背負う苦しいスタートとなりました。
それでも大宮はボールを支配し、前半終了時点のポゼッションでは鳥取32%、大宮68%。敵陣までボールを運びながら同点を狙いましたが、前半45分に鳥取の山本颯太が自陣側から一気に持ち上がり、最後は相手をかわして追加点。鳥取が2-0で折り返します。
そして後半57分。山本がカウンターから左サイドを突破し、自らPKを獲得。これを自分で決めて3-0としました。
大宮も69分に小林柚希がドリブル突破からPKを獲得し、自ら決めて1点を返しましたが、反撃はここまで。鳥取が3-1で勝利し、次のラウンドへ駒を進めています。
2. なぜ鳥取は大宮に勝てたのか?試合を分けた3つのポイント
ポイント①開始2分の先制点が試合の構図を変えた
この試合を語るうえで、やはり藤田一途の開始2分のゴールは外せません。
鳥取はロングスローの流れからセカンドボールを回収し、藤田がミドルシュート。ボールはGK笠原昂史の手前でバウンドし、そのままゴール右へ吸い込まれました。
技術的にも見事なシュートでしたが、それ以上に大きかったのが「時間帯」です。
格上を相手にすると、先に失点した側は前へ出ざるを得ません。鳥取は開始直後にリードしたことで、無理にボールを保持する必要がなくなり、自分たちが狙いたかった守備からカウンターという形へ試合を持ち込めました。
ポイント②大宮がボールを持ち、鳥取が試合を支配した
サッカーでは「ボールを持っているチーム=試合を支配しているチーム」とは限りません。この試合は、その典型だったように感じます。
大宮は前半だけで約68%のポゼッションを記録。杉本健勇や日隠ナシュ大士が中盤でボールに絡み、小林柚希も右サイドから何度も仕掛けました。
しかし、鳥取はそこに付き合いませんでした。
中央の危険なスペースを締め、最終的には5-3-2気味のローブロックでゴール前を固める。大宮にボールを持たせながら「どこで奪い、どこへ出るか」が整理されていました。
前半45分の山本のゴールは、その狙いが最も分かりやすく表れた場面です。
相手陣中央へボールを運ぶと、山本はそのままドリブルでゴール前へ進入。DFをかわして右足で仕留めました。
大宮からすれば攻め続けていた時間帯での失点。精神的にも非常に重い2点目でした。
ポイント③シュート数ではなく「決め切る力」で鳥取が圧倒
Jリーグ公式記録では、シュート数は鳥取7本、大宮14本。枠内シュートも鳥取3本に対して大宮8本でした。
それでもスコアは3-1です。
数字だけを見れば不思議に映りますが、実際の内容を見ると理由は明確です。
鳥取は「打てそうだから打つ」のではなく、カウンターから相手守備が整う前にフィニッシュまで持ち込んでいました。
一方、大宮はゴール周辺まで運べても、最後のシュートを鳥取の守備陣にブロックされる場面が多かった。66分には日髙元がゴール前で狙いましたが、GKバーンズ・アントンがセーブしています。
終盤も大宮は鳥取陣内へ押し込みましたが、鳥取は5バックでスペースを消し続けました。攻撃回数では大宮でも、「決定機の重さ」では鳥取が上回っていました。
3. ガイナーレ鳥取|スタメン・途中出場選手の評価点
※採点は10点満点。当サイトによる独自評価です。
ガイナーレ鳥取選手採点
| 区分 | 選手 | ポジション | 採点 | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| 先発 | バーンズ・アントン | GK | 7.5 | 大宮のシュートを冷静に処理。66分の日髙の決定機を止めた場面も大きい。 |
| 先発 | ヴァンイヤーデン・ショーン | DF | 6.5 | 押し込まれる時間帯でも中央を締め、最後まで粘り強く対応。 |
| 先発 | ローレンス・マルコ | DF | 6.5 | 守備ブロックの中心として奮闘。前半には攻撃参加からシュートも放った。 |
| 先発 | ムン・ミン | DF | 6.5 | 73分までサイドのスペースを管理。大宮の攻撃を簡単には加速させなかった。 |
| 先発 | 大嶋春樹 | DF | 6.5 | ペナルティエリア内で身体を張り、大宮のシュートコースを消した。 |
| 先発 | 藤田一途 | MF | 7.5 | 開始2分の先制弾が試合を大きく動かした。鳥取のゲームプランを成立させた一撃。 |
| 先発 | 東條敦輝 | MF | 6.5 | 大宮にボールを持たれる中で中盤の強度を維持。終盤まで運動量を落とさなかった。 |
| 先発 | 田制裕作 | MF | 6.5 | 派手さはないが守備時のポジショニングが安定。カウンターへ移る土台を作った。 |
| 先発 | 橋本清太郎 | MF | 6.5 | 前半から積極的にゴールへ向かい、攻守の切り替えにも貢献。73分交代。 |
| 先発 | 山本颯太 | FW | 9.0 | **MOM。**45分の独走弾に加え、後半は自らPKを獲得して成功。2得点で勝利の主役。 |
| 先発 | 小西陽向 | FW | 6.5 | 前線から守備を続けながらカウンターの出口を担当。数字以上に重要な役割だった。 |
| 途中出場 | 篠田大輝 | FW | 6.0 | 62分から出場。3点リード後も前線で起点となり、75分にはシュートも記録。 |
| 途中出場 | 荒井涼 | DF | 6.0 | 73分投入。大宮が攻勢を強める時間帯で守備強度を維持した。 |
| 途中出場 | 河村匠 | MF | 6.0 | 73分からプレー。中盤の運動量を補充し、逃げ切りに貢献。 |
| 途中出場 | 木内達也 | MF | 6.0 | 90+2分から出場。プレー時間は短かったが、試合を締める役割を果たした。 |
鳥取のMOMは文句なしで山本颯太でしょう。
45分のゴールは、カウンターだからといって簡単に決められるものではありません。長い距離を運びながら相手DFをかわし、最後まで落ち着いてシュートを選択しました。
さらに57分には、自ら仕掛けてPKを獲得し、そのキックも成功。
2得点という結果だけではなく、「鳥取が狙っていたサッカーを最も高いレベルで実行した選手」という意味でも9.0点としました。
4. RB大宮アルディージャ|スタメン・途中出場選手の評価点
RB大宮アルディージャ選手採点
| 区分 | 選手 | ポジション | 採点 | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| 先発 | 笠原昂史 | GK | 5.5 | 3失点。先制点は手前でバウンドする難しいボールだったが、結果として厳しい夜になった。 |
| 先発 | イヨハ理ヘンリー | DF | 5.5 | ボール保持では安定したが、鳥取のカウンターを止め切れず。 |
| 先発 | 中山昂大 | DF | 5.5 | ビルドアップに関与し終盤にはシュートも放ったが、3失点の守備面は減点。 |
| 先発 | 茂木力也 | DF | 5.5 | 78分までプレー。攻撃時に高い位置を取った一方、その背後を使われる場面もあった。 |
| 先発 | 井芹響輔 | DF | 6.0 | 左サイドから積極的に攻撃参加。クロスからチャンスを作った点は評価したい。 |
| 先発 | 杉本健勇 | MF | 6.0 | 中盤で相手の位置を見ながらボールを受け、攻撃のリズムを作った。 |
| 先発 | 日隠ナシュ大士 | MF | 6.0 | 公式戦デビュー。アンカーとして積極的に配球し、自らシュートも狙った。 |
| 先発 | エドワード真秀 | MF | 5.5 | 27分には好機でヘディング。決めていれば展開は変わった可能性があった。 |
| 先発 | 日髙元 | FW | 6.0 | 66分の決定機はGKに阻まれたが、背後への動きでチャンスを作った。 |
| 先発 | スファナット・ムエアンタ | FW | 5.5 | シュートまで持ち込む場面はあったものの、得点につながらず56分交代。 |
| 先発 | 小林柚希 | FW | 7.0 | 大宮で最も怖さを見せた選手。右サイドから何度も仕掛け、PK獲得+自ら成功。公式戦初得点。 |
| 途中出場 | 松井匠 | MF | 6.0 | 56分から出場。サイドで仕掛けて攻撃のテンポを変えた。 |
| 途中出場 | 小島幹敏 | MF | 6.0 | 69分投入。終盤には左ポケットへ入り込み決定機につながるプレーを見せた。 |
| 途中出場 | 泉柊椰 | MF | 6.0 | 左ウイングで幅を作り、終盤の攻勢を支えた。 |
| 途中出場 | 加藤玄 | MF | 5.5 | 88、89分と立て続けにゴールへ迫ったものの、最後の一押しを欠いた。 |
| 途中出場 | 関口凱心 | DF | 6.0 | 78分から右SBへ。ビハインドの中で積極的に高い位置を取った。 |
大宮で最も評価したいのは小林柚希です。
右サイドでは1対1から何度も仕掛け、前半17分にもゴールへ迫りました。後半69分には自らドリブルでPKを獲得し、そのままキッカーを務めて公式戦初ゴール。
本人は試合後、複数の決定機を得点につなげられなかったことを反省点として挙げていますが、この日の大宮攻撃陣の中では最も相手守備を困らせた選手だったと言えます。
5. ガイナーレ鳥取の課題と今後への改善点
課題①ボールを握る展開で同じ強さを出せるか
大宮撃破は文句なしの好結果ですが、鳥取にも課題はあります。
この日は早い時間に先制できたことで、守備ブロックを作り、相手にボールを持たせながらカウンターを狙う展開に持ち込めました。
しかし、リーグ戦では逆に鳥取がボールを持たなければならない試合も増えるでしょう。
相手が自陣に引いたときにどう崩すのか。スペースがない状態でも山本や小西の良さをどう引き出すのか。
「速攻の鳥取」だけでなく「遅攻でも点を取れる鳥取」になれば、チームとしてもう一段上へ行けます。
課題②押し込まれた際の被シュート数
鳥取は勝利したものの、Jリーグ公式記録では大宮に14本のシュート、8本の枠内シュートを許しました。
今回はバーンズの好守や守備陣のブロックで1失点に抑えましたが、毎試合同じように耐え切れるとは限りません。
特にセカンドボールを回収された後、もう一度ペナルティエリア周辺へ押し込まれる場面を減らしたいところです。
前線からの守備と最終ラインとの距離をもう少しコンパクトにできれば、守備の安定感はさらに増すでしょう。
6. RB大宮アルディージャの課題と今後への改善点
課題①試合開始直後の集中力
最大の反省点は、やはり開始2分の失点です。
ナダル監督も試合後、立ち上がりの失点がチームを難しい状況へ追い込んだ趣旨のコメントを残しています。
格下カテゴリーのクラブとの一発勝負では、相手に先制点を与えるほど難しい展開はありません。
まして鳥取のように、リード後に守備ブロックを組んでカウンターへ移行できるチームならなおさらです。
まずは開始15分を「攻撃する時間」だけではなく「絶対に失点しない時間」と捉える試合運びが必要でしょう。
課題②ボール保持率をゴールへ変える「縦の速さ」
大宮は長い時間ボールを保持し、鳥取陣内でプレーしました。
しかし後半になるにつれ、鳥取は5-3-2のローブロックを形成。横パスで揺さぶっても5バックがスライドし、肝心のゴール前ではスペースを消されました。大宮公式レポートでも、パスのテンポを上げ切れなかったことが指摘されています。
改善したいのは、相手が守備位置を整える前の攻撃です。
ボールを奪った直後に一度縦へ入れる。サイドチェンジを行った後にワンタッチ、ツータッチでクロスまで持っていく。
「ボールを持つこと」から「相手が嫌がるスピードで動かすこと」への転換が求められます。
課題③14本のシュートで1得点だった決定力
最後はシンプルに決定力です。
大宮はシュート14本、枠内シュート8本。それでも得点はPKによる1点だけでした。
攻撃そのものが機能しなかったわけではありません。
むしろチャンスは作れています。
だからこそ、最後のシュート精度、ゴール前での一歩目、クロスへ入る人数など、「最後の5メートル」の質を高める必要があります。
小林だけにフィニッシュを任せるのではなく、インサイドハーフや逆サイドの選手がペナルティエリアへ入っていく回数を増やせれば、リーグ戦でも得点パターンはさらに広がるでしょう。
7. まとめ|鳥取3-1大宮は「ジャイアントキリング」だけでは片付けられない
2026年9月2日のルヴァンカップ1回戦は、ガイナーレ鳥取3-1RB大宮アルディージャという結果になりました。
カテゴリーだけを見れば「J3がJ2首位を倒したジャイアントキリング」です。
ただ、90分を振り返ると偶然の勝利ではありません。
鳥取は開始2分に先制し、大宮が前へ出てくる展開を利用。守備ではスペースを消し、攻撃では山本颯太を中心に少ないチャンスを確実に得点へ変えました。
特に山本の2得点は圧巻でした。
一方、大宮も悲観する内容ばかりではありません。Jリーグ公式ではシュート14本、枠内8本を記録し、ボールを保持しながら相手陣内へ進入するところまではできています。
現在、大宮は2026/27シーズンのJ2で3勝1分、首位。リーグ戦では好調を維持しています。鳥取もJ3で2勝1分1敗の5位につけており、このルヴァンカップ勝利を含め公式戦で勢いに乗っています。
鳥取にとっては「格上にも自分たちの形が通用する」と確信できる勝利。
大宮にとっては「ボールを支配していても、試合を支配できるとは限らない」と改めて突きつけられた敗戦です。
カップ戦らしい一発勝負の怖さと面白さが凝縮された90分でした。
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