リヴァプールはエヴァートンから生まれた?「マージーサイド・ダービー」130年の歴史と新スタジアム時代

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「フレンドリー・ダービー」という世界的にも珍しい呼び名を持つダービーがあります。リヴァプールFCとエヴァートンFCによる「マージーサイド・ダービー」です。他の有名なダービーのような宗教的・政治的な憎悪とは少し異なる、同じ街に生きる人々の絆と誇りが交差するこの試合の歴史を、創設の秘密から現在の新スタジアム時代まで一気に解説します。

目次

リヴァプールFCはエヴァートンの内紛から生まれた

このダービーを語る上で欠かせない驚きの事実があります。リヴァプールFCというクラブは、もともとエヴァートンFCの内部対立の産物として生まれたのです。

1890年代初頭、エヴァートンは現在のアンフィールドをホームスタジアムとして使用していました。当時のスタジアムオーナーであり、エヴァートン会長でもあったジョン・ホールディングが賃料の大幅値上げを要求し、さらに自分の醸造所のビールをスタジアムで独占販売するよう理事会に迫ったことで、両者の関係は決裂します。

禁酒運動を支持する自由党系の理事たちにとって、ビール販売の強要は道徳的に受け入れられないものでした。1892年、エヴァートンの理事会はアンフィールドを去り、スタンレー・パークの対岸にグディソン・パークを建設します。スタジアムを所有したまま取り残されたホールディングは、自身の競技場を使わせるために新たなクラブを作ります。それがリヴァプールFCです。

つまり、「土地とビールの利権争い」がこの壮大なライバル関係の始まりでした。

なぜ「フレンドリー・ダービー」と呼ばれるのか

リヴァプールという街では、父親がエヴァートンのファンで息子がリヴァプールのファン、あるいはその逆という家庭がごく普通に存在します。家族が別々のクラブを応援するため、スタジアムでも赤と青のシャツが隣り合って座り、冗談を交わしながら観戦する光景が伝統的でした。

1984年のリーグカップ決勝と1986年のFAカップ決勝は、いずれも両チームのファンがウェンブリーを埋め尽くした「フレンドリー・ファイナル」として今も語り継がれています。スタンドでは「マージーサイド、マージーサイド」という共同のチャントが響き渡り、ロンドンの地でリヴァプールという都市の力を示しました。

この連帯は悲劇の場でも発揮されました。1989年のヒルズボロの惨事で96名(後に97名と認定)のリヴァプール・ファンが犠牲になった際、エヴァートンのサポーターは両スタジアムを青と赤のスカーフで繋ぐ鎖を作り、街全体で喪に服しました。「フレンドリー・ダービー」の真の意味は、こうした市民社会としての深い連帯にあります。

通算対戦成績:リヴァプールが大きくリード

2026年3月現在の通算公式戦成績です。

大会試合数リヴァプール勝利引き分けエヴァートン勝利
旧1部リーグ146544844
プレミアリーグ67301225
FAカップ151203
リーグカップ4211
合計2471016878

リヴァプールが大きくリードしていますが、エヴァートンも78勝を挙げており、決して一方的な関係ではありません。注目の個人記録では、イアン・ラッシュがダービー通算25ゴールで歴代最多。エヴァートン側ではディキシー・ディーンの19ゴールが最多です。プレミアリーグ時代限定ではスティーヴン・ジェラードの9ゴールが最多で、現在はモハメド・サラーが8ゴールでその記録に迫っています。

また、プレミアリーグ史上すべての対戦カードの中でレッドカードが最も多く出ているのもこのダービーで、通算23枚という記録があります。「フレンドリー」なのはスタンドだけで、ピッチの上は常に激しい戦いです。

歴史に残る試合と「呪縛」の打破

2018年12月:オリギの奇跡の一撃

後半ロスタイム6分に決まったディヴォック・オリギのゴールは、エヴァートンGKのミスを突いた一撃でした。アンフィールドが熱狂の渦に包まれたこの場面は、近年のダービー史に残る衝撃のゴールとして記憶されています。

2021年2月:20年以上続いた「アンフィールドの呪い」が解ける

エヴァートンは1999年以来、アンフィールドで20年以上勝利を挙げられずにいました。その呪縛を解いたのが、アンチェロッティ監督率いるエヴァートンによる2-0の勝利です。無観客という特殊な環境下でしたが、歴史的な勝利として今もエヴァートンファンに語り継がれています。

2024年4月:エヴァートンの意地がリヴァプールの優勝を阻んだ

残留争いの渦中にいたエヴァートンがグディソン・パークでリヴァプールを2-0で撃破。この結果がリヴァプールのタイトル争いに致命的なダメージを与えました。ダービーが持つ「戦力差を超えた特別な力」を証明した試合です。

2025年:エヴァートンが新スタジアムへ移転

2025年、マージーサイド・ダービーは大きな転換点を迎えます。エヴァートンが133年間使用したグディソン・パークを離れ、マージー川沿いのウォーターフロントに建設された「ヒルド・ディキンソン・スタジアム」へ移転したのです。

項目詳細
収容人数52,888人
総工費約8億ポンド
立地リヴァプール北部ブレンリー・ムーア・ドック
開幕戦2025年8月、対ブライトン 2-0 勝利

グディソンの「住宅街に佇む伝統的な要塞」という雰囲気は失われましたが、最新の音響設計を施した新スタジアムは新たな迫力を生み出しています。

2025〜26シーズンの状況と次のダービー

2026年3月現在の順位です。

順位クラブ試合勝ち点
6リヴァプール2948
8エヴァートン2943

リヴァプールはアルネ・スロット監督のもと、クロップ体制からの移行期に主力の負傷が重なり、トップ4争いで停滞中。エヴァートンはデイヴィッド・モイーズ監督が復帰し、アウェイ成績がリーグ2位という堅実な戦いで8位と安定しています。

次のダービーは2026年4月19日、ヒルド・ディキンソン・スタジアムで開催されます。新スタジアムで行われる初のマージーサイド・ダービーというだけで、両クラブのファンにとって歴史的な一戦になることは間違いありません。

スロットの「複雑なポゼッションサッカー」とモイーズの「セットプレーを武器にした堅実なリアリズム」という、対照的な哲学の激突にも注目です。サラーがダービー通算9ゴールのジェラード記録に並ぶかどうかも、ひとつの見どころです。

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