サポーターの熱狂と、4年に1度の世界最高峰の戦いが繰り広げられる「W杯2026」。アメリカ、カナダ、メキシコの3カ国共催という史上最大規模で行われるこの大会において、試合の勝敗を大きく左右するのが「審判」の存在です。
特に現代サッカーにおいて、勝負の公平性を保つための要となっているのが「VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)」です。
今回スポットライトを当てるのは、南米の強豪アルゼンチンが誇るVARのスペシャリスト、エルナン・マストランヘロ(Hernán Mastrángelo)氏です。ピッチ上の主審を影から支え、ミリ単位の攻防を監視する彼の経歴やプレースタイル、そして本大会での役割についてプロの視点から詳しく解説します。
2026年W杯に向けた【エルナン・マストランヘロ】への期待
サッカー史上最もデジタル化が進む大会になると予想されるW杯2026。オフサイドラインの半自動判定やゴールラインテクノロジーなど、数々の最先端技術が導入される中で、それらを正確にコントロールする「人間の目」の重要性はかつてないほど高まっています。
そうした中、ビデオマッチオフィシャル(VMO)として世界基準の信頼を集めているのが、アルゼンチン出身の審判、エルナン・マストランヘロ氏です。
彼はピッチ上の荒れる展開を裏から見守り、主審が下した判定を精査してゲームの「正義」を守るスペシャリスト。アルゼンチンの激しい国内リーグで培った卓越した危機管理能力と、驚異的な映像分析スピードを武器に、世界一の舞台でも極めて重要な役割を果たすと期待されています。
【エルナン・マストランヘロ】のプロフィールと主な経歴
まずは、エルナン・マストランヘロ氏の基本的なプロフィールと、これまでの歩みを見ていきましょう。
| 項目 | プロフィール詳細 |
| 本名 | エルナン・マストランヘロ(Hernán Mastrángelo) |
| 生年月日 | 1981年4月4日 |
| 国籍 | アルゼンチン |
| プロデビュー | 2015年 |
| アルゼンチン1部デビュー | 2017年 |
| FIFA国際VAR登録年 | 2023年 |
マストランヘロ氏は、1980年代から90年代にかけてプロのサッカー審判員として活躍したカルロス・マストランヘロ氏を父に持つ、まさに「レフェリー界のサラブレッド」です。
幼い頃から審判という職業を身近に見て育った彼は、父の背中を追うように審判の道へ進みます。2015年にプロ資格を取得すると、2017年にはアルゼンチン1部リーグ(リーガ・プロフェシオナル)で主審デビューを飾りました。デビュー戦となったベレス・サルスフィエルド対ウラカンの試合を1-1の引き分けでコントロールし、その落ち着いたゲームメイク能力が国内で早くから評価されていました。
その後、レフェリングの技術はもちろんのこと、VAR技術の台頭に伴いビデオ判定の分野で非凡な才能を発揮。2023年にはFIFA(国際サッカー連盟)の国際審判員リストにVAR専門官として正式登録されました。
これまでの主な実績と担当したビッグマッチ
国際舞台におけるマストランヘロ氏の実績は、近年のFIFAやCONMEBOL(南米サッカー連盟)の大会において、彼がいかに信頼されているかを物語っています。
彼のキャリアにおける代表的な実績は以下の通りです。
- コパ・リベルタドーレス(南米最高峰のクラブ大会)
- 南米の王者を決める非常に激しい大会において、数多くのビッグマッチにVARとして参画。2024年大会の決勝戦でもビデオマッチオフィシャルとして抜擢されました。
- FIFAクラブワールドカップ2025
- アメリカで開催された、世界中のトップクラブが集結する新しいフォーマットの大会に招集。
- 世界最先端のVAR環境下で、マンチェスター・シティ対ユヴェントスといった、世界中が注目するモンスターカードのVAR/AVARを担当しました。
- アルゼンチン国内リーグ(スーペルクラシコなど)
- ボカ・ジュニアーズやリバープレート、ラシン・クラブといった、世界一荒れると言われるアルゼンチンのダービーマッチを数多く主審・VARの両面から担当。
これらの大舞台での経験値は、彼が単なる理論派のVARではなく、「世界で最もプレッシャーのかかる現場」で判定を冷静に下せる実戦派であることを示しています。
レフェリングの特徴と傾向
エルナン・マストランヘロ氏の最大の強みは、「状況に応じた優れた二面性」にあります。
1. 主審としては「対話重視の対外交渉型」
彼がピッチ上で笛を吹く際、むやみやたらにイエローカードやレッドカードを提示することはありません。まずは選手に対して毅然としつつも冷静に声をかけ、興奮する選手たちを落ち着かせる「対話(コミュニケーション)」を最優先します。この外交的なコントロール術によって、荒れ狂うアルゼンチン国内のゲームを何度も沈静化させてきました。
2. VARとしては「ミリ単位の冷静さと圧倒的なスピード」
ビデオ審判室に入ったマストランヘロ氏は、打って変わって非情なまでに冷徹なアナリストとなります。
試合の流れやスタジアムの不穏な空気に一切流されることなく、送られてくる複数のカメラアングルから瞬時に最適な映像を切り出し、主審に的確なアドバイスを送ります。
過去の物議を醸した判定
2024年11月に行われたウラカン対ボカ・ジュニアーズの試合において、マストランヘロ氏は当初、ウラカンに対してペナルティキック(PK)を宣告しました。しかし、VARからの助言を受けて映像を確認(オンフィールドレビュー)した結果、判定を覆し、PKを取り消しました。
この判定は試合後、両クラブのファンやメディアの間で激しい議論(スタジアム内でのちょっとした騒動に発展)を巻き起こしましたが、結果的に「ルールに基づいた客観的な最適解」を導き出したものとして、審判技術委員会からはその毅然とした態度が高く評価されました。
2026年ワールドカップで審判団に選出される可能性
W杯2026の開幕に向けて、各大陸連盟からは優秀な審判員が続々とリストアップされています。その中で、南米のCONMEBOL枠としてエルナン・マストランヘロ氏が本大会のVAR審判団(VMO)として選出される可能性は、極めて高い(ほぼ確実)と言われていました。
そして2026年4月、CONMEBOLがFIFAに提出した「2026年ワールドカップ公式審判団リスト」において、彼の名前はアルゼンチンを代表するVAR審判員として正式に選出されました。
今回のアルゼンチン審判団は、主審として世界的に有名なファクンド・テージョ氏やダリオ・エレーラ氏らが選ばれていますが、彼らピッチ上のレフェリーが100%の力を発揮するためには、信頼できる同郷のVAR専門官が裏に控えていることが不可欠です。
激しい南米予選やクラブW杯を経験し、国際的な信頼も厚いマストランヘロ氏の選出は、FIFAにとっても「大会のジャッジクオリティを保証する」ための確実なピースと言えます。
まとめ
本記事では、W杯2026での活躍が約束されたアルゼンチン出身のVAR専門官、エルナン・マストランヘロ氏の実績やそのレフェリングスタイルについて解説してきました。
- 親子二代で活躍するアルゼンチン審判界のサラブレッド
- ピッチ上では「対話」を、VAR室では「冷静な客観性」を重んじるプレースタイル
- コパ・リベルタドーレスやFIFAクラブW杯2025での豊富なビッグマッチ実績
- W杯2026において、最高精度のジャッジを裏から支える守護神としての役割
かつてのように「主審一人の目」に頼る時代は終わり、現代サッカーは審判団の「共同作業」によって作られています。裏方でありながらも、試合の運命を決定づける権限を持つマストランヘロ氏。本大会で彼がモニター越しにどのような「神の目」を見せるのか、今から大いに注目しましょう!
免責事項
この記事に記載されている情報は、執筆時点(2026年6月)での公式発表および独自の調査・分析に基づくものです。実際のW杯本大会における個々の試合の担当割り当てや、FIFAによる最終的な運用変更等については、FIFA公式発表(https://www.fifa.com/ )を随時ご確認ください。


