スコットランド・グラスゴーで繰り広げられる「オールドファーム」は、世界で最も宗教的・社会的な背景を色濃く持つサッカーダービーのひとつです。セルティックFCとレンジャーズFCの対立は、単なる勝ち負けの話ではなく、カトリックとプロテスタント、アイルランド系移民とスコットランド土着の人々、そして歴史の傷跡が折り重なっています。なぜここまで深い溝があるのか、その背景をひもといてみましょう。
「オールドファーム」という名前の由来
このダービーの呼称には、1904年のスコティッシュ・カップ決勝前にスポーツ紙に掲載された風刺画に由来するという説が有力です。両クラブが互いに利益を享受し合う「二人の古い友人(two old, firm friends)」として描かれたことがはじまりとも言われています。
ただし近年、この呼称に異議を唱える声も出てきています。2012年にレンジャーズが経営破綻して清算・再出発を余儀なくされた際、多くのセルティックサポーターが「旧レンジャーズはもう存在しない」として「オールドファーム」という言葉の使用を拒否し、「グラスゴー・ダービー」と呼ぶようになりました。この呼称論争自体が、今もふたつのクラブの間にある緊張感を象徴しています。
ふたつのクラブが背負う宗教と民族のアイデンティティ
| クラブ | 創設年 | 創設の背景 | 支持層のルーツ |
|---|---|---|---|
| セルティックFC | 1887年 | アイルランド系カトリック移民への慈善支援 | アイルランド系移民・カトリック教徒 |
| レンジャーズFC | 1872年 | 若者4人による同好会として出発 | スコットランド人・プロテスタント教徒・英国王室支持派 |
セルティックはマリスト修道会士ブラザー・ウォルフリードが、グラスゴー東部で生活する貧しいアイルランド系移民を支援するために設立しました。最初の目的は貧困児童への食事提供の資金調達でした。
レンジャーズはもともと宗教色が薄いクラブでしたが、グラスゴーの造船業などプロテスタントが主導する産業界と結びつくにつれ、プロテスタント・コミュニティの象徴へと変わっていきます。1912年に北アイルランドの造船大手がグラスゴーへ進出し、多くのプロテスタント労働者が流入したことで、この構図はより鮮明になりました。
両クラブによる最初の公式対戦は1888年5月28日。セルティックが5-2で勝利したこの試合が、130年以上続くライバル関係の幕開けでした。
カトリック選手を採用しなかった「116年間」
オールドファームの歴史の中でとくに重い事実が、レンジャーズが長年にわたってカトリック教徒の選手と契約しなかったことです。明文化されたルールではありませんでしたが、この慣行は1989年にモー・ジョンストンが加入するまで116年間続きました。
この姿勢は、当時の造船所など産業界の差別的な雇用慣行とも呼応していました。ジョンストンの加入はスコットランド中で大きな衝撃を与え、クラブ内外で激しい議論を呼んだほど、宗教的な壁は深く根付いていたのです。
1980年のスコティッシュ・カップ決勝後にはピッチへの乱入と衝突が発生し、これをきっかけにスポーツ施設内でのアルコール販売禁止という法律が制定されるまでに至りました。
通算対戦成績:451試合でわずか1勝差
2026年3月8日のスコティッシュ・カップ準々決勝(0-0、PK戦でセルティックが4-2勝利)終了時点の成績です。
| 大会 | 試合数 | レンジャーズ勝利 | セルティック勝利 | 引き分け |
|---|---|---|---|---|
| スコットランド・リーグ | 341 | 130 | 118 | 93 |
| スコティッシュ・カップ | 55 | 18 | 26 | 11 |
| リーグカップ | 55 | 24 | 27 | 4 |
| 合計 | 451 | 172 | 171 | 108 |
451試合で1勝差という均衡ぶりは驚異的です。主要タイトルの獲得数でも、リーグ優勝はなんと両者とも55回で並んでおり、今シーズンの行方が「スコットランド史上最多優勝クラブ」の称号を決める重要な節目になっています。
得点記録ではレンジャーズのアリー・マッコイストが27ゴールで歴代最多、セルティックのジミー・マクグローリーが22ゴールで続きます。最多出場はレンジャーズのアレック・スミスで87試合(1894〜1915年)という記録を誇ります。
2025〜26シーズン:監督交代の嵐と「第三の刺客」ハーツの台頭
今シーズンは両クラブとも指揮官が大きく動きました。
セルティックはシーズン途中にブレンダン・ロジャーズが辞任。暫定から正式就任を繰り返す混乱を経て、2026年1月にレジェンドのマーティン・オニールが正式に監督に就任しました。レンジャーズもラッセル・マーティンが成績不振で解任され、ドイツ人のダニー・ロールが後任に就いています。
そして今シーズン最大のサプライズが、エディンバラのハーツが首位を走っているという事実です。
2026年3月初旬の順位表(上位3チーム)
| 順位 | チーム | 試合 | 勝 | 分 | 負 | 勝ち点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ハーツ | 29 | 19 | 6 | 4 | 63 |
| 2 | セルティック | 29 | 18 | 4 | 7 | 58 |
| 3 | レンジャーズ | 29 | 15 | 12 | 2 | 57 |
二強の直接対決での勝利が、タイトル奪還に欠かせない状況になっています。
今シーズンの直接対決の結果
| 日付 | 大会 | 会場 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月31日 | リーグ戦 | アイブロックス | 0-0 引き分け |
| 2025年11月2日 | リーグカップ準決勝 | ハムデン | セルティック 3-1 |
| 2026年1月3日 | リーグ戦 | セルティック・パーク | レンジャーズ 3-1 |
| 2026年3月1日 | リーグ戦 | アイブロックス | 2-2(旗手怜央が91分に劇的同点) |
| 2026年3月8日 | スコティッシュ・カップ | アイブロックス | 0-0(PK 2-4 セルティック勝利) |
3月1日のリーグ戦では、日本代表の旗手怜央が91分に劇的な同点ゴールを決めるなど、最後まで目が離せない展開となりました。
2026年後半の見どころ:スプリットラウンドでの直接対決
スコットランド・プレミアシップでは33節終了後に上位6チームによる「スプリット(決勝ラウンド)」が行われます。ハーツを加えた3者によるタイトル争いの決着は、このスプリット期間に持ち込まれる可能性が高く、そこで組まれるオールドファームは「優勝を直接決定する試合」になるかもしれません。
ただし、3月8日のカップ戦後にスタジアムで発炎筒が投げ込まれファンが乱入するなどの騒乱が発生し、スコットランド首相が「容認できない」と名指しで批判する事態に。今後のダービーでアウェイファンが完全禁止される可能性も浮上しており、試合内容とは別の意味でも注目が集まっています。

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